検索ページへ 検索ページへ
メニュー
メニュー
TOP > 福祉仏教ピックアップ > 『文化時報』掲載記事 > 「令和の糞掃衣」完成、1000人縫い上げ 須磨寺

つながる

福祉仏教ピックアップ

「令和の糞掃衣」完成、1000人縫い上げ 須磨寺

2024年8月4日

※文化時報2024年6月7日号の掲載記事です。

 真言宗須磨寺派大本山須磨寺(小池弘三貫主、神戸市須磨区)が参拝者と共に制作していた「令和の糞掃衣(ふんぞうえ)」が完成し、5月25日、お披露目と結縁法要「香りと音楽による糞掃衣結縁祭り」が開催された。一針一針を縫い上げた参拝者たちは、太古の衣が無事に再現されたことを喜び合った。(春尾悦子)

 糞掃衣は、道端に落ちていた小さな布切れを洗い清め、重ね合わせて綴(つづ)った袈裟(けさ)のこと。「お釈迦(しゃか)様の体と同じ」として重んじられ、最上の袈裟として仏典に伝えられる。奈良・正倉院には、それを模した聖武天皇の袈裟が納められている。

「令和の糞掃衣」の完成を祝い、実際に身にまとって関係者らと共に記念撮影に臨む小池陽人副住職(中央)
「令和の糞掃衣」の完成を祝い、実際に身にまとって関係者らと共に記念撮影に臨む小池陽人副住職(中央)

 今回のプロジェクトは、奈良国立博物館の三田覚之主任研究員監修の下、聖徳太子がまとったと伝わり法隆寺献納宝物(東京国立博物館蔵)に伝来する糞掃衣をモデルに作成。現存する資料を基に図案を起こし、当時のものと同様の染料を用いて、延べ約千人の手によって一針一針縫い合わされた。

 須磨寺の敦盛桜と高野山奥之院の樹木から紡いだ糸で、「縁樹の糸」(加藤貴章代表)が織り上げた布を使用。昨年7月から縫い始めて年末に完成した。

 5月25日は本尊宝前に糞掃衣を供え、完成を奉告。志野流香道21世家元継承者の蜂谷宗苾(はちやそうひつ)若宗匠が献香し、開眼供養を営んだ。真言宗御室派布教師の大原英揮遍照院(岡山県倉敷市)住職がバイオリンを奏で、須磨寺に伝わる一弦の須磨琴の演奏が奉納された。

 参加者らは、袈裟をまとった小池陽人副住職に促されるまま、触れて感触をたしかめ、何度となく記念撮影した。小池副住職は「多くの方々のご協力で見事完成に至った。大きな法要で身に着け、袈裟に込められた祈りと共に平和な世界の実現を祈りたい」と話した。

平和祈念の遺志を継ぐ

 「令和の糞掃衣」プロジェクトは、昨年1月に逝去した真言宗御室派の古刹(こさつ)、般若寺(山口県平生町)の福嶋弘昭前住職が発願して始まった。

 福嶋前住職は、大乗仏教の心である「衆生済度」を取り戻し、世界を平和にすることへ強い思いを持ち、「和を以(もっ)て貴(とうと)しと為(な)す」と説いた聖徳太子の精神を、令和の時代に受け継ぎたいと念願。太子の糞掃衣を再現し、それをまとって祈ることを考えていたという。

触って感触を確かめるプロジェクトの参加者ら
触って感触を確かめるプロジェクトの参加者ら

 さらに福嶋前住職は生前、袈裟を三つ作って一つを大本山須磨寺の小池陽人副住職に渡したいと周囲に話しており、小池副住職がこのプロジェクトを引き継ぐことを決めた。

 須磨寺は完成を記念し、9月10~11日の1泊2日で、般若寺や高野山真言宗別格本山西大寺(岡山市東区)、広島・宮島の御室派大本山大聖院(広島県廿日市市)などを巡る「御礼と御報告の旅」を企画している。問い合わせは須磨寺(078―731―0416)。

おすすめ記事

error: コンテンツは保護されています