検索ページへ 検索ページへ
メニュー
メニュー
TOP > 『文化時報』コラム > 福祉仏教の現場から > 〈119〉刑法改正と布教

読む

「文化時報」コラム

〈119〉刑法改正と布教

2026年3月22日

※文化時報2026年2月10日号の掲載記事です。

 下関駅の駅舎が放火により焼失してから20年がたちました。2006(平成18)年1月、刑務所から出所したばかりの70代男性が「刑務所に戻りたい」と段ボールに火をつけ、駅舎に燃え移り全焼しました。幸いけが人は出ませんでしたが、男性は懲役10年の実刑判決となりました。のちに地域生活定着支援センターが各都道府県に設置されるきっかけの一つとなった事件と言われています。

 男性に手を差し伸べたのが、北九州市でさまざまな社会活動を行っている奥田知志牧師でした。

 服役中の10年間に手紙をやりとりし「必ず迎えに行くから」と励まし続けたそうです。そして、男性は刑期を終え約束通りに迎えに来た奥田牧師の元で今も元気に暮らしておられるとのことです。先日そんな報道が地元テレビ局で伝えられました。

 ところが、批判的なコメントが殺到したのです。「放火を美談にするな」「犯罪者をのうのうと生かす福祉などいらない」などなど160件を超えるコメントをニュースサイトで全て読みましたが、胸が痛くなりました。

 男性は知的障害があるそうです。コメントの中には知的障害に対する無知な書き込みや刑事司法への誤解もたくさん見受けられました。生い立ちや背景に関する情状は全く考慮されず、結果だけが責められる社会ということでしょう。

 昨年6月に改正刑法が施行され、刑罰の体系が115年ぶりに見直されました。それまでの懲役刑と禁錮刑が廃止され、立ち直りを目指す「拘禁刑」が導入されました。

 100年あるいはそれ以上の長期にわたって染み付いている懲役という考えが一気に変わるとは思いません。しかし、犯罪を減らすには罰を与えるだけではダメだとようやく法律が変わったのです。

 その考えが広く国民に浸透するまであと何年かかるのでしょう。私がこの世でのいのちを終えるまでにどこまで広まっているのでしょうか?

 わが国で暮らす宗教者の皆さんにぜひお願いしたいのです。おそらく今回の刑法改正は、多くの宗教宗派の教義と整合性があるでしょう。今こそ布教の時です。宗教界が一丸となって取り組むテーマではないかと思います。

同じカテゴリの最新記事

おすすめ記事

error: コンテンツは保護されています