2023年6月12日 | 2024年8月5日更新
※文化時報2023年2月17日号の掲載記事です。
時々、どうしようもない気分になります。底なしの沼? 身動き取れない小さな箱? 捜しても捜しても出口のない迷路? う~ん、どれもうまく言い表せていないのですが、とにかく、どうしようもないのです。
どうして、皆等しく、楽に死ねないのでしょう。
腫瘍が気管を押しつぶして、息が少ししか通らない。24時間、枕を顔に押し付けられているようだと。「苦しい。苦しい。なんのための苦しさなんだ!」と問うた方。
几帳面に毎日付けてきた闘病日記の字が乱れはじめ、認識が混乱する。「おかしいな。考えがまとまらない。壊れてきた。止めてください。止めてください」と懇願なさった方。
身体がぱんぱんにむくむ。重すぎて、自分の力で寝返りを打つこともできない。「もう嫌だ。もういいの。もうやめさせて」と涙した方―。
生まれてしまったのだから、いつの日か死ぬのは仕方のないことだと思っています。そりゃ、嫌だし、怖いけれど、だからと言って、不老不死の薬をよこせと駄々をこねるつもりはありません。
でも、でも、でも、でも、せめて、楽に死なせてくれませんか。誰一人漏れなく、皆平等に、楽に逝かせてくれませんか。なんで、最後の最後に苦しい思いをさせる? むなしい思いをさせる? 怖い思いをさせる? いったい誰がこんなひどいことをしているのでしょう。神も仏もあったものじゃない!
医者にも神仏にも楽にしてもらえないなら、衆生はいったいどうしたらいいのでしょうね。私は、ただただ、それを見て虚無に落ちるばかり。どこかに答えがあるのでしょうか。浅学な私が、まだ見つけられていないだけ? もう見つけた方はいらっしゃいますか? ご存じでしたら教えてください。分かりやすく、私にも分かる言葉で、教えてください。
そんなことを考えながら書棚を片付けていたら、本を落としてしまいました。拾おうとして、折れたページから目に飛び込んできた文字は、「ごまめの歯ぎしり」でした。