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「文化時報」コラム

〈47〉髪を切るのも受刑者

2023年8月20日 | 2024年10月2日更新

※文化時報2022年12月20日号の掲載記事です。

 教誨師(きょうかいし)や保護司をされている宗教者は多いと思う。筆者はそのどちらでもないが、刑務所へ行く用事は多い。

 現在の刑務所は2006(平成18)年に施行された刑事収容施設法に基づき運営されている。その法律ができた結果、社会復帰促進センターという名称のいわゆる民活刑務所が開設されるようになった。刑務所も変わろうとしている。

 同法ができる前は旧監獄法が刑務所運営の根拠法であった。1908(明治41)年に施行された法律が100年間も変わらずに運用されていたのである。平成の世になり次々と刑務所内の虐待事件が発覚し、明治時代にできた法律では時代にそぐわないということが新法成立の背景となった。

 しかし、ほぼ100年間にわたって厳守されてきた法律の精神がそう簡単に変わるのは難しい。刑務所内を見学すると感じるが、刑務官の怒鳴り声は今も響き渡っている。外部の者がいる時でもそんな様子なので、外部から見えない所ではどうなっているのかと想像してしまう。

 先日、女性ばかりが収監される刑務所に行ってきた。その刑務所では、職業訓練の一環として敷地内に美容室がある。規定の料金を支払えば一般人も利用できる。ただし女性しか利用はできない。筆者はこの美容室の見学は2度目である。美容師資格を持つ受刑者が髪を切っている。その姿は受刑者とはとても思えない。女性の刑務所は、男性ばかりの刑務所と違って少し緩やかな面がある。

 教誨師や保護司はある一定の条件下でしか対象者と接触できない。法務省のルールの中で動いているからである。それは尊い行為であり尊敬に値する仕事である。しかし、筆者はもっとフラットな関係で「元受刑者」と付き合っていきたいと考えている。

 数十人の女性受刑者を前にそんな話をしてきた。すると、なぜだか「キャー」という黄色い歓声が上がり、刑務官の皆さんもニコニコしていた。刑務所はやはり変わってきたのだろうか? あるいは女性ばかり収容されている刑務所だからだろうか? 塀の外で再会できる日を楽しみにしておこう。

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