2024年6月29日 | 2024年10月2日更新
※文化時報2024年4月9日号の掲載記事です。
2日、文化時報「福祉仏教入門講座」第5期の最終講があった。最後は「ケーススタディー」が恒例となっている。筆者のところへ実際にあった相談を教材として「私ならこうする」という考えをグループに分かれて出し合ってもらった。
ペーパーテストに慣れている人は「これだけの情報では分からん」と戸惑う。ペーパーテストは唯一の正答を導けるよう必要な情報は全て問いに含まれている。
しかし、実際の相談業務は必要な情報などほとんどない。相談者が理路整然と話してくれるわけではない。相手の言葉を一つずつ丁寧に聞いていく作業が必要となる。急ぎすぎると相手から「もういいです」と拒絶され、モタモタしていると「相談しても何もならない」と去っていかれる。だから「傾聴力」が必要となる。
ウンウンとうなずいているだけではだめだろう。相手が「この人は真剣に自分の苦しみを聞いてくれている」と実感できるようにしたい。また、興味本位で聞くことは避けたい。「他人の不幸は蜜の味」になると相手を深く傷つけることになる。そのことは忘れてはならない。「手に負えないなら、聞くな」と厳しいことを言うベテラン相談員もいるくらいだ。
実践力を養うために最終講の「ケーススタディー」を設けてある。正答などない。あくまでも「私ならこうする」というディスカッションをする。それは受講者一人一人が置かれている立場や環境が異なるからである。他の人のように自分もできるようになるには「何が足りないのか?」を考える機会になればと思っている。
第5期の講座は盛況のうちに終了した。第6期の募集は始まっている。筆者は自分の思う福祉仏教を日々進化させている。小コラムでお伝えはするが、生の声を聞いていただくこともおすすめしたい。多彩な講師陣なので実践力を鍛えるには最適な内容になっているはずである。第6期もたくさんの受講者と意見交換できることを楽しみにしている。