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「文化時報」コラム

〈82〉福祉と仏教は同じ道

2024年8月25日 | 2024年10月2日更新

※文化時報2024年6月11日号の掲載記事です。

 従業員の行動指針に当たるクレドが「生まれてきてよかった」から始まる法人がある。大阪府東大阪市で就労移行支援事業所などを運営している一般社団法人アミュー(岩﨑勝代代表)だ。先日、自己肯定感についてのイベントに参加してきた。

 福祉仏教の現場から

 20人ほど集まったうちの半数くらいが初参加のようだった。軽快な音楽に乗ってダンスをするところから始まり、老若男女が楽しい時間を過ごした。聞法道場の原点を見るような思いだった。

 前回の小欄で引用した真宗大谷派大阪教区教化センター編『共に道を求めて―法事のこころ』に示された「法事の意義」には、「人間に生まれて本当に良かった」という一文がある。アミューのクレドと言っていることはほぼ同じに思えた。

 福祉の現場にいるとさまざまな障害を抱える人と出会う。「生まれてきてよかった」と思える社会なんだろうか?と心の中で問う。

 鎌倉新仏教の宗祖が生まれた時代は、今では想像できないほど過酷な社会であっただろう。自然災害、飢饉(ききん)、疫病、そして戦。常に死と隣り合わせで暮らす民衆に向けて教えが説かれたことであろう。明日の見えない絶望感の中で希望の光を燃やし続けたのが、各宗祖が示した道だったと想像できる。

 現代のわが国は大多数の人にとって80歳や90歳まで生きるのが当たり前となった社会である。そんな社会に生まれてはきたが、生きるための「障害」が大きく立ちはだかる人もいる。

 福祉制度の整備が進む一方で、「障害者」と決め付けられては社会参加を阻害されると感じる人もいる。少なくとも、各種障害者手帳を持つことが社会参加の妨げになってはいけないと思う。

 アミューは、利用者の一般就労に力を入れている。特別視されるのではなく、強みを生かして働く喜びを知ってほしいということだと思う。その姿勢が希望の光になっていると感じる。

 福祉と仏教は別物ではない。お互いを知ることで、同じ道を歩む友だったと気付くのではないだろうか。

 

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