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インタビュー

橋渡しインタビュー

医療的ケア児の子育てと仕事の両立 内山智絵さん

2024年12月16日

 新潟市の公認会計士・税理士、内山智絵さん(38)は3児の母親で、次女のみづきちゃん(5)は先天性心疾患のため医療的ケアを必要としている。保育園に通いながら治療を続けており、再来年に迫る小学校入学時には、在宅酸素療法が終わることを願っている。医療的ケア児の子育てと仕事の両立について聞いた。

 内山さん一家は夫と長女(8)、みづきちゃん、長男(3)の5人暮らし。みづきちゃんは、医療的ケア児を受け入れられる保育園に通っている。看護師2人が常駐しているという。

写真1:かわいい表情のみづきちゃん
かわいい表情のみづきちゃん

 クラスを担当する複数の保育士のうち、1人がみづきちゃんの専任になり、酸素ボンベを背負って過ごしているという。みづきちゃんが動けば、保育士も一緒に動き、他の子どもたちと同じように過ごしている。

 一方、内山さんは子どもたちが学校や保育園にいる間に、法人や個人事業主を中心に決算申告や記事執筆、監修などを行っている。また、新潟の女性起業家をサポートしたいと、オンラインなどで積極的に経営に関する相談を受けている。

 午後3時を過ぎると、子どもたちのお迎えに車を走らせる。2歳下の弟は別の園にいるため、内山さんは学童クラブと2カ所の保育園へ迎えに行き、その後は習い事や夕食の支度などで慌ただしい毎日を送る。

 本音を言えば、平日にもっと仕事をしたいと思っているが、今は現実的でない。家事と子育て、次女の病院の付き添いに、母親として日々奔走している。

心臓の部屋が三つしかなかった

 みづきちゃんは2019年9月生まれ。内山さんのお腹にいる時から、医師に病名を告げられていた。ショックを受け、出産前は先が見えず不安が募った。

 「普通、心臓の中には四つの部屋がありますが、みづきには三つしかありません。生まれた時点から呼吸が苦しく、まるで山の5合目にいるような状態の体でした」

写真2:内山家の子どもたち 
内山家の子どもたち

 医師と何度も話し合い、万全な体制で臨んだ出産。みづきちゃんは生まれた直後から、新生児集中治療室(NICU)へ入った。24時間体制の看護を必要とし、点滴や処置を受けて生後1カ月から手術を行った。

 コロナ禍の際に行った2回目以降の手術は、術後のICUでの面会ができず、担当医の電話連絡で状況を聞くのみだった。直近の手術では、みづきちゃんは強い治療薬で意識が朦朧(もうろう)とし、なかなか声が出なかったり、夜中にパニックを起こしたりするなど、小さい体には想像以上の負担がかかった。

 治療に専念するため、内山さんは育休前まで働いていた職場を退職。個人事業主になる選択をした。自身の母親も税理士事務所を立ち上げ、自宅で仕事をしていたことから「私にもできる」と希望を持った。

 「正直なところ、仕事があるからメンタルを保てている部分はあります。子育てだけだったらつらかった」。全ての業務を自分一人で行う責任はあるが、仕事にやりがいはあった。

不登校を経験、公認会計士・税理士へ

 内山さんは東京都世田谷区出身。中学受験をして進学校へ進んだが、周りの同級生たちとの雰囲気になじめず、劣等感を抱えて不登校になった。

 その後は定時制高校に通い、居酒屋でアルバイトをしていた。父親の勧めで新潟にある大学の夜間コースに進学。勉強する意欲が湧き、猛勉強の末、4年生の時に公認会計士・税理士資格を取得した。

 卒業後に監査法人の事務所で働き、現在の夫と知り合った。すっかり新潟の暮らしに慣れ、ママ友や地域コミュニティーでの交流も増えて、自分で何かを始めようと真剣に取り組む女性たちから、力をもらっていた。

写真3:内山智絵さん
内山智絵さん

 2年前には長男を出産。「私たち親に何かあった時には、きょうだい3人で支えあって生きてほしい」と願う。小さな弟を一生懸命あやす娘たちの姿を見ているのが、何ともほほえましくなる瞬間だ。

姉弟と同じ小学校に通えるか

 今、頭に浮かぶのは再来年の春に迎えるみづきちゃんの小学校入学。長女と同じ学校へ通えるのか、在宅酸素療法が終わるのか、まだ何も分からない。

 内部疾患を持っている子どもの様子は、はたから見ると理解しにくい。だが、今のままでは学校の階段を上がるだけで息が苦しくなってしまう。

 内山さんによれば、みづきちゃんの場合、体調によって普通学級と支援学級を行き来する可能性が高い。だが、子どもによっては二つの学級で過ごすことで、自尊心を傷つけられてしまうこともあるという。

「私自身は、学校生活が全てではないと思っていますが、集団の中で社会性を学ぶことはとても大事だと感じます」

 内山さんは来年春から、学校側と教育委員会に出向き、話し合いを重ねる予定だ。「娘にできる治療は全部やってきました。あとは、就学相談を始めていきます」と一歩一歩、前進している。

 万が一、たとえ姉や弟と違う小学校に決まったとしても、毎日楽しく通ってほしい。友達と仲良く元気に過ごしてくれることが、内山さんにとっての何よりの願いだ。

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