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お寺と福祉の情報局

【今さら聞けない】アドボカシーとは

2025年3月13日

▼アドボカシー
日本語では「権利擁護」と訳される。医療や福祉の現場においては、自分の意思を十分に伝えることのできない高齢者や障害者、患者、子どもなどの意見を聞き、代弁者がその権利を主張したり、自己決定をサポートしたりする取り組みのことを指す。

支援を必要とする子ども(イメージ)
支援を必要とする子ども(イメージ)

 医療や福祉の現場では、支援者と支援を受ける当事者との間で認識のずれが生じる場合が多々あります。アドボカシー活動では、両者を仲介し、当事者の意見を丁寧に聞き取ることで、支援者が状況やニーズをより的確に知ることができます。

 元々米国で始まったアドボカシー活動は、貧困撲滅を掲げて2005年に始まった「ほっとけない世界のまずしさ」キャンペーンをきっかけに、日本でも注目されるようになりました。

 意思表明が難しい人に代わって権利を主張することは「権利擁護」活動が有名ですが、特定の問題について行政や政府に直接働きかける「政策提言」や「ロビイング(ロビー活動)」なども、アドボカシーに含まれる場合があります。米国などでは、これらもアドボカシーの一つとして活発に行われています。

 日本でのアドボカシーは、主に以下の三つの分野で用いられています。

① 福祉・介護
 知的障害・精神障害・認知症などにより、自ら意思表明をすることが難しい人々のために取り組まれています。福祉サービスの利用援助や日常生活のサポートなどを行う「日常生活自立支援事業」などが該当します。

② 医療・看護
 患者の尊厳やプライバシーを尊重し、よりよい支援につなげるための活動として行われています。1981年の第34回世界医師会(WMA)総会で採択された「患者の権利に関するWMAリスボン宣言」に基づき、看護職が代弁者となって患者の権利を守ります。

③ 子ども
 貧困や虐待などにより、権利を行使することが難しい子どもたちをサポートする取り組みです。2023年に創設された「こども家庭庁」のほか、「子どもアドボカシー学会」や「NPO法人全国子どもアドボカシー協議会」など、さまざまな団体によって普及活動が行われています。

権利主体としての子ども

 このうち子どもアドボカシーについて、近年関心が高まっています。

 子どもアドボカシーが求められる背景には、急速な少子化や虐待の増加、貧困問題などがあります。

 厚生労働省の人口動態統計によれば、出生数は1973年に約209万人を記録した後に減少の一途をたどり、2019年には約87万人となっています。

 また、こども家庭庁が行った22年度の調査によれば、児童相談所における児童虐待相談対応件数は増加傾向にあります。特に19年度は前年度比21.2%増と大幅に増加し、22年度には21万4843件(速報値から4327件減少)と過去最多を記録しています。

 22年に行われた国民生活基礎調査によれば、21年の子どもの貧困率は11.5%と18年から2.5ポイント減少しているものの、ひとり親家庭では44.5%と、半数近くに及んでいます。

 これを受け、児童に対する総合的な法律である「こども基本法」が23年4月に施行され、こども家庭庁が創設されました。

 こども家庭庁は子どもの権利を守るために組織された政府機関であり、子育て支援や環境づくりに関するさまざまな施策を行っています。ホームページは大人向けと子ども向けに分かれ、資料にひらがなを多く使うなど、子どもにもわかりやすいように工夫がなされています。

意思をどう反映するか

 アドボカシーに関する取り組みでは、他者の声に耳を傾けることのできる、「傾聴」のスキルを持った人材が必要とされています。
 
 子どもの意見を聴取し、児童への対応に反映させるために重要なのが「意見表明支援員」です。

 意見表明支援員は「アドボケイト」とも呼ばれ、一時保護を受けている子どもの声を聴いて権利の実現をサポートする役割を担います。2024年に施行された改正児童福祉法で、「児童の意見聴取等の仕組みの整備」として導入が推進されました。都道府県などで意見表明支援員の導入が努力義務となったのです。

 NPO法人全国子どもアドボカシー協議会による23年度「子どもの意見表明等支援事業に関するアンケート」調査では、「児童の意見聴取等の仕組みが整っている」と回答した自治体は全体の23%であり、そのうち79%の自治体が課題を抱えていると回答しました。課題として多く挙げられたのが、「意見表明支援員の不足」と「意見聴取の手法」です。

 意見表明支援員の養成について、こども家庭庁からもガイドラインが出ています。それによれば、支援員の需要に対して人材の発掘や育成に課題がある状況となっています。自治体によっては実践的な研修を行えない、そもそも意見表明支援員の研修を行える団体が近くにない、といった問題を抱えている場合もあります。

 全国的にアドボカシーの普及活動を行う子どもアドボカシー学会やNPO法人全国子どもアドボカシー協議会のほかに、各地域にもさまざまな団体がありますが、需要に追い付いていないのが実情です。

参考リンク

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