2022年12月12日 | 2022年12月12日更新
JR与野駅(さいたま市浦和区)の西口から徒歩10分ほどの場所に、東日本最大級の広さの福祉・介護用品の展示場がある。「介護すまいる館」。埼玉県社会福祉協議会が2001(平成13)年から運営している。介護保険の給付対象となる介護用品を中心に、病気や障害があっても使いやすいユニバーサルデザインの商品など、日々進化するさまざまな福祉・介護用品約1300点が展示されている。
介護すまいる館では、相談員へ気軽に質問ができ、介護保険の利用方法から福祉・介護用品の選び方、使い方まで丁寧に教えてもらえる。購入することも可能だ。
団体での見学も受け入れており、高齢者支援や福祉教育などの学びの場として利用されることも多い。電動ベッドや車いすなど、自立を支援する用具について詳しい解説を聞けて、理解を深めることができるからだ。県外からも申し込みがあるという。
実際に用具を身に着けたり、試してみたりすることもでき、事前予約すれば貸し出しまで対応してくれる。高齢者や介護者が快適な毎日を過ごすために、介護・福祉用品を直接「見て、触れて、試せる」施設となっている。
展示されているものは、歩行や外出時に必要なシルバーカーやつえ、車いすが目立っている。要介護度が上がるほど必要とされる介護・福祉用品も増えるため、それに対応した入浴介助コーナーやポータブルトイレがある。介護用ベッドの種類も、従来の商品から最新の機種まで並ぶ。
食事介助に使う曲がりやすいスプーンや、汁物がすくいやすい形状のスープ皿などもあり、生活全般で必要な物はほぼそろえられそうだ。また、昭和の芸能人のかるたカードなど、ユニークな高齢者用レクリエーショングッズまで並んでいる。
「豊富な品ぞろえなので、自分に合う用具を見つけやすいです」と話すのは、介護すまいる館担当の埼玉県社会福祉協議会地域活動支援課の主任、山野邊明美さん。
「つえやシルバーカーなどは種類が多く、色や柄も豊富です。介護すまいる館ではなるべく柄物を多く展示し、カタログでは伝わらない色合いや柄の入り方まで、じっくり見て選んでいただけます」
また、予算を相談員に伝え、その範囲内で用具を探すことにも対応するなど、来場者に納得したものを選んでもらえるようにしている。
さまざまな福祉・介護用品の中でも、最近特に注目されるのは「介護ロボット」だという。
2020(令和2)年から厚生労働省による「介護ロボットの開発・実証・普及のプラットフォーム」事業が始まり、全国17カ所の介護ロボット導入相談窓口の一つに、介護すまいる館が選ばれた。より多くの福祉施設に普及させるため、約70種類ある介護ロボットの無料貸し出しを行っている。
中でも、最新の介護ロボットPALRO(パルロ)は常にインターネットにつながり、歌100曲以上を覚え、体操を得意としている。それ以外にも、日々のニュースや、顔認証で前日に話した会話なども記憶。会話すると本当の友達とコミュニケーションをとっている感覚が味わえるという。
愛らしい形のChapit(チャピット)は「今日は燃えるごみの日。ヘルパーさんが来るよ」と朝・昼・晩の声掛けをしてくれる。家電の操作もでき、占いまでしてくれるユニークな機能を持つため、対話することが楽しくなるロボットだ。
山野邊さんは、介護ロボット導入のメリットについてこう語る。「コミュニケーションが少なくなった認知症の方が、かわいい介護ロボットと簡単な会話を楽しむことでロボットに愛着が湧き、生活に張りが生まれる方もいます。新しい可能性を見いだせますね」
介護すまいる館では、新型コロナウイルスの感染拡大以降、ホームページでの発信にも力を入れている。見学や相談のため来場することが難しくなってしまった人たちに向けて、これまで以上に用具の情報を増やしているという。
山野邊さんによると、ホームページを充実させてから問い合わせ件数は増えたのだとか。
「福祉用具のQ&Aというコーナーを設け、全18問に詳しくお答えしています。他にも福祉用具のレビューや動画での紹介を行い、コンテンツを増やすことで、反響が大きくなったと感じています。遠方の方にも福祉用具のフォローができ、少しでも安心してもらえたらうれしいです」
「福祉・介護用品は決してケアされる側だけのものではなく、介護をする側の体の負担を軽くする利点もあります。お互いに日々の暮らしに安心できて、健康的に過ごせるよう、これからも日進月歩でさまざまな用具が開発されていくことに期待しています」。山野邊さんはそう話している。