2023年4月26日
日本人が苦手なものの一つに「ドレスコード」があるのではないでしょうか。欧米などでは食事をする店の格などに応じた服装が求められることがあります。高級高齢者住宅の中には「ディナーの時はジャケット着用」がルールになっているところもあるそうです。
それに対して、日本の高齢者住宅では、入居者は食堂などの共用部でもラフな格好で過ごしていることが多いようです。これは、高齢者住宅自身が「ここは皆さんの家ですので、くつろいでください」と打ち出していることに加えて、浴衣でも館内や屋外を歩ける日本の旅館のスタイルに慣れている入居者が多いことが原因と思われます。
さて、日本国内でも、高級な高齢者住宅の中には「食堂やロビーは公共スペースですので、それにふさわしい格好をしてください」と入居者に求めているところがありますが、なかなか徹底されないことが多いようです。そうした中、ある有料老人ホームでは、ちょっとした工夫でそれに成功しました。
それは「建物入り口のげた箱を撤去すること」です。これまで、このホームでは入り口でスリッパや館内履きに履き替えてもらっていました。日本人にとっては「靴を脱ぐ=家の中に入る」ですので、この場合は、館内全てが「自分の家の中」という意識になります。
しかし、げた箱がなければ入居者は自室に入る際に初めて靴を脱ぐことになりますので、「自室以外は公共スペース」の意識が生まれます。結果として、寝間着などで自室外に出る入居者はいなくなったそうです。
土足のまま館内を歩くことで清掃の手間は増えますが、入居者が服装に気を使うようになったことで、認知機能低下防止につながるなどといったメリットも出ているようです。