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お寺と福祉の情報局

【今さら聞けない】ACPとは

2023年11月6日 | 2024年6月25日更新

▼ACP(アドバンス・ケア・プランニング)
 主に終末期医療において希望する治療やケアを受けるために、本人と家族、医療従事者らが事前に話し合って方針を共有すること。過度な延命治療を疑問視する声から考案された。「人生会議」の愛称で知られる。

ACPが行われる様子(イメージ画像)
ACPが行われる様子(イメージ画像)

 ACPは、ケアを受ける本人と家族などの信頼できる人、医療従事者や介護従事者などで構成する医療・ケアチームが、人生の最終段階における医療・ケアに関して話し合う形で行われます。

 まず、医師らから本人へ病状などについての適切な説明がされます。そして本人と家族、医療・ケアチームが話し合い、どのように最期を迎えるか具体的に方針を定めます。

 いったん納得のいく方針を共有できたとしても、時間の経過に伴い、病状や本人の意思は変化していくことが考えられます。適切なケアを行うためには、その都度、話し合いを繰り返すことが重要です。

 ACPにより本人の意思を確認し、最期の時に生命維持のための治療をやめ、苦痛を取り除く緩和ケアに切り替えることもあります。しかし、生命を短縮する意図で行われる積極的安楽死はこれに当てはまらず、ACPの対象ではありません。

「話し合う」ことの重要性

 人生の最期に医療やケアなどを自分で決めることができない人は、約70%に上ると言われています。意思決定能力が衰える前に、自分の意思を示しておく必要があるのです。

 ただ、ケアを必要とする本人のみで方針を決定するには限界があります。

 ACPは1990年代から提唱されてきましたが、これに先立つ概念として、1970年代にAD(アドバンス・ディレクティブ)が考案されました。ACPが家族と医療・ケアチームとの話し合いを指すのに対して、ADは将来受けるであろう医療行為に対する本人の意思を、口頭または文書として形にしたものを指します。

 ADは、終末期医療において有効ではありませんでした。その理由としては、本人が医師や看護師らと充分なコミュニケーションを取らずに、文書を作成できることが挙げられます。医師や看護師との意思疎通の不足から、本人の望む治療・ケアを実際の現場に生かすことが難しいのです。また、本人の意思確認が綿密に行われず、文書作成当時から方針が変化したかどうか分からないという問題もあります。

 そこでACPという、本人の意思を専門家チームで共有するプロセスが推し進められるようになりました。本人の求めるものや大切なものの優先順位などを周囲の人間が理解することで、より複雑な状況に対応できるようになったのです。

普及に向けて

 しかし、ACPにもまだ課題があります。

 アメリカで生まれたACPという言葉は、まだ日本では普及しているとは言えません。厚生労働省の2022年度の「人生の最終段階における医療・ケアに関する意識調査統計」によれば、ACPについて「よく知っている」と答えた人は全体の約30%でした。17(平成29)年度の調査では約15%であり、倍増しているのですが、医師・看護師・介護専門員を除く一般国民への認知度は5.9%にとどまりました。

 背景には、自らの最期について考えること、そしてそれを他人と共有することの難しさがあると考えられます。

 上記の統計では、人生の最終段階における医療・ケアに関する希望について、これまでに考えたことが「ある」と考えた人は、一般国民のうち51.9%でした。しかしそのことについて、身近な人や医療・介護従事者と話し合っているかという質問では、「詳しく話し合っている」「一応話し合っている」を合わせても、29.9%でした。自らの最期について考えなくてはならないと分かっていても、まだ比較的健康な状態で具体的な対処を考えるのは難しいでしょう。

 実際の医療現場で適用することが難しいことも、ACPの普及を妨げています。本人が将来の自分の病状を推測することができないことや、医療・ケアの選択肢が具体的に示されないことから、本人の意向を実際の治療に反映できない場合も多いのです。

 超高齢多死社会の中で、最期の時をどう迎えるかがこれまで以上に問題になります。ACPは最期まで自分らしく生きるために重要なプロセスです。社会の中では浸透しておらず、実際の医療・ケアの現場でも十分に生かされていませんが、今後はACPのプロセスを、ケアを必要とする本人にとっても、それを支える周囲の人々にとっても、より行いやすく改良していくことが求められます。

参考リンク

 

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