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お寺と福祉の情報局

誰も利用しなかった自慢の大浴場

2022年10月10日

 首都圏に、元気な高齢者向けのマンションがあります。会社員を定年退職後に起業した社長が「自分と妻がついのすみかとして住むために、とことん理想を追求した」とあって、約30戸という小さな規模ながら共用部には大浴場を備えています。もちろん社長夫妻もそこに住んでいます。

大浴場(イメージ画像)
豪華な大浴場(イメージ画像)

 しかし、自慢の大浴場を利用する人がほとんどいません。利用しているのは社長と夫人ばかり。不思議に思った社長夫人は、思い切って住民の1人に「なぜ、利用しないのか」と聞いてみました。すると「だって…恥ずかしいじゃない」と意外な返事が返ってきました。

 「でも、温泉旅館の浴室や銭湯と同じじゃないですか?温泉はみんな喜んで入るのに、どうして?」

 いぶかしがる夫人に、住民が口にしたのは「住民同士の中途半端な距離感」でした。つまり「家族や親しい友人なら一緒に入っても恥ずかしくない。逆に、温泉や銭湯はその場限りの赤の他人同士なので見られても恥ずかしくない」のですが「マンションの住人同士」という「全く知らないわけではないけれど、それほど気心が知れた仲ではない人」に裸を見られるのは恥ずかしいということでした。

 また約30戸という規模ですと、大浴場といっても男女ともに定員は4~5人程度。浴室にいるのは自分以外に1人だけということも考えられます。「それほど親しくない人と浴室内で2人は気詰まりだ。無視はできないし、何か会話しようにも続かない」というのが利用しない理由だったのです。

 「20人ぐらい一度に入れ、外部の人も利用できるお風呂だったらよかったのですが…」と言われましたが、後の祭り。誰も入らないのに水道代や清掃代がもったいないとのことで、早々に大浴場は閉鎖してしまったそうです。

 

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