2024年9月14日
コミュニケーションロボットを介護現場に導入する動きが広がっています。特に、認知症の人の「話し相手」になってもらい、帰宅願望を軽減させるなどの活用事例が多くみられます。
そうしたロボットの先駆けが、アザラシの赤ちゃんのぬいぐるみロボットです。しかし、犬や猫など人間にもっと身近な動物がいる中で、なぜアザラシなのでしょうか?
理由は「アザラシが身近ではない」からです。
いくら精巧なロボットでも、本物の犬や猫と全く同じには作れません。特に俊敏な動きの再現は、現在の技術では不可能です。
多くの人は、実際に犬や猫を見たことや、触ったことがあります。ですから犬や猫を模したロボットの場合、認知症の人でも「これは本物の犬や猫ではない」と気付いてしまい、興味を失う可能性があります。
それに対してアザラシの赤ちゃんは、写真などで見たことはあっても、実際に触ったことのある人はほとんどいません。「どんな手触りなのか」「どのぐらいの速さで動くのか」なども知りません。その結果、本物の動物だと思ってずっとかわいがってくれる、というわけです。
また、あるロボットは人間の赤ん坊の姿をしていますが、あえて目、鼻、口を省いています。
一見するとかなりの違和感を覚えます。しかし、開発者によると「認知症の人は完全な人型でなくても、それを人として認識できる。眼や鼻は認知症の人にとっては逆に『情報過多』になる」のだとか。かなり重度の認知症の人でも、このロボットが泣くと、本能的に抱いてあやすそうです。
技術が進むと、全く人間と見分けのつかないロボットが登場するのかと思いがちですが、認知症ケアの現場などでは、あえて「リアル感がない」ほうがいいのかもしれませんね。