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障害ある子の親に届けたい 絵本配布へ5月CF

2025年4月18日

※文化時報2025年3月4日号の掲載記事です。

 重度の障害のある子ども2人を持つ大阪市住吉区の片山初美さん(58)が、障害のある子どもを持つ親の心を描く絵本『なんで なんで それってね・・』を完成させた。浄土宗願生寺(大阪市住吉区)の大河内大博住職が共同代表を務める合同会社「さっとさんがLab」が制作を支援。知的障害者を対象とする特別支援学校に配布しようと、5月からクラウドファンディング(CF)を始める準備を進めている。(大橋学修)

(画像1:絵本『なんで なんで それってね・・』)
絵本『なんで なんで それってね・・』

 2月14日、願生寺で『なんで なんで それってね・・』のお披露目会が開かれた。特別支援学校に通う子どもの保護者ら30人が参加。ピアニストの鳩山冴映さんがこの作品のために作った曲を演奏する中、絵本をスクリーンに投影し、社員研修講師の牧原愛さんが感情を込めて朗読した。

 絵本は、わが子の子育てで葛藤する片山さんが、心穏やかになった経験を元にしたフィクション。障害のある子ども「きみちゃん」と母親の物語だ。

 「きみちゃん」に翻弄(ほんろう)される母親が、人を助けるたびに天から幸せの光が降り注ぐ夢を見る。そして、子育てが「天からのご褒美をもらえるチャンス」と気付き、「大変だったのは、この気付きをくれるためだったのね」と、子育てへの思いを変化させていく。

 あとがきに「見方が変われば心が変わる。心が変われば日常が変わる」と記した大河内住職は「自分が変わることで、問題が価値あるものになる。そういった自己変革を、お子さんを通して見事に行っている」と話した。

母の口癖「徳を積む」

 片山さんは絵本のアイデアの元になった夢を、2022年12月に見ていた。夜中に大声を上げたり外へ走り出そうとしたりする次男の行動が約3カ月続き、不眠が常態化していた頃、ふとうたた寝したときに見たという。

(画像2:スクリーンに作品を投影したお披露目会)
スクリーンに作品を投影したお披露目会

 子どものころにしばしば耳にした母親の口癖「徳を積む」を思い出した。

 「わが子に良いことをさせてもらう機会を与えられている」「この子は、人に与えることを教えるために生まれてきた」と気付いた。

 また「私が被害を受けていると考えることは、子どもを加害者にすることだ」とも思った。わが子が水を床にこぼせば、「そういえば床掃除をしていなかったな。ありがとう」と感謝するように心がけた。すると、一転して心が軽くなっていった。

 片山さんは「自分の気持ちが落ち着くと、子どもも安定する。それに驚いた」と笑う。

防災で生まれた縁

 片山さんと大河内住職が交流するようになったのは、願生寺が21年に始めた防災プロジェクトがきっかけだった。お寺を医療的ケア児=用語解説=らの避難所とするためのイベントや、一般財団法人お寺と教会の親なきあと相談室(小野木康雄代表理事、京都市下京区)の願生寺支部が開く分かち合いの会に参加し、関係を築いてきた。

 「夢で得た気付きを、皆に伝えたい」と片山さんが思ったときに、脳裏に浮かんだのが願生寺だった。大河内住職を訪ねて思いの丈を吐き出すと、絵本にすることを提案された。

 絵は、片山さんのめいが担当。大河内住職は、アートで心のケアに取り組む吉賀亜姫(よしがあき)さんに編集を依頼するなど、必要とされる人材を集めた。

(画像3アイキャッチ兼用:支援メンバーと共に絵本を披露する大河内住職と片山さん(前列左から))
支援メンバーと共に絵本を披露する大河内住職と片山さん(前列左から)

 今後は、CFを5月にスタートさせるなど、特別支援学校に絵本を配布するための資金集めに取り組む。片山さんは「ご住職とのつながりですごいことになった。障害のある子を育てる人に読んでもらい、気持ちを楽にしてほしい」と話している。

【用語解説】医療的ケア児

 人工呼吸器や胃ろうなどを使用し、痰(たん)の吸引や経管栄養などの医療的ケアが日常的に必要な児童。厚生労働省によると、2021年度時点で全国に約2万180人いると推計されている。社会全体で生活を支えることを目的に、国や自治体に支援の責務があると明記した医療的ケア児支援法が21年6月に成立、9月に施行された。

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