2022年11月26日
※文化時報2022年9月6日号の掲載記事です。
大阪市天王寺区の浄土宗西照寺(正木唯真住職)が8月23日に営んだ地蔵盆に、地元の天王寺区社会福祉協議会や大阪教育大学の学生が運営者として参加した。きっかけは、昨年6月に西照寺が始めた介護者カフェ=用語解説=。お寺を開くことで伝統の地蔵盆が守られるとともに、地域の課題解決や活性化につながる可能性がうかがえる。(大橋学修)
お寺に親しめる機会として地蔵盆を続けようと、西照寺は2018(平成30)年から近隣の西念寺と良運院の3カ寺合同で開催。親子連れらが各寺の地蔵尊を巡拝し、お供えのお菓子をお下がりとして頂く。
今年は西照寺で「寺子屋Teller(テラー)」を開く大阪教育大学の学生や天王寺区社会福祉協議会が、射的や工作などの体験コーナーを設けた。いずれも介護者カフェの運営に関わる協力者だ。
正木住職は「介護者カフェがどんどん派生している。お寺を開けば地域とつながれる」と話し、視察した大阪市社会福祉協議会の巽俊朗副所長は「拠点を設けることに悩む支援者は多い。お寺という場を開いてもらうだけで意味がある」と語った。
本堂では、大阪教育大学4年の牧澪(まき・りょう)さんが西照寺で運営する困窮者向けの書道教室「澪尽(みおつくし)書道教室」が作品展を開催。書道パフォーマンスも披露した。
牧さんが書道教室を開こうと考えたのは、放課後児童クラブでアルバイトをした際、経済的に苦しい家庭の子どもが、やりたいことをできていないことに気付いたため。長らく書道に取り組んできたことから、困窮者支援として書道教室を開くことに思い至ったという。
だが、運営資金は全額持ち出しである上に、拠点を設けるには場所を借りる必要がある。悩んでいる時に知ったのが、同じ大学の学生が運営する「寺子屋Teller」。正木住職に相談したところ、快く場所を提供してもらえたという。
今年1月から、月2回ペースで教室を開いている。対象は4歳児から小学6年生までで、会費は無料。毎回出席する必要はなく、定員を10人にして、申し込み順で参加者を決めている。登録児童数は28人に上るという。
牧さんは「放課後児童クラブでは、希望に満ちた子どもたちの興味や関心を聞き流すしかなく、とても苦しかった。書道教室を子どもたちの大好きな居場所にしたい」と話した。
【用語解説】介護者カフェ
在宅介護の介護者(ケアラー)らが集まり、悩みや疑問を自由に語り合うことで、分かち合いや情報交換をする場。「ケアラーズカフェ」とも呼ばれる。主にNPO法人や自治体などが行い、孤立を防ぐ活動として注目される。