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防災はお寺と 支援学校PTA、住職招き学習会

2023年1月26日

※文化時報2022年10月21日号の掲載記事です。

 大阪府立東住吉支援学校(甲斐俊夫校長、大阪市東住吉区)のPTAは12日、「災害への備えと助け合いの輪づくり」と題し、特別支援教育学習会を開いた。浄土宗願生寺(同市住吉区)の大河内大博住職と小西かおる大阪大学大学院教授(災害看護学)を講師に招き、障害のある子の保護者と教職員約20人が参加。講演とワークショップで防災への意識を高めた。(主筆 小野木康雄)

ワークショップ「クロスロード」を通じ、保護者らが防災への意識を高めた
ワークショップ「クロスロード」を通じ、保護者らが防災への意識を高めた

 講義に立った大河内住職は「お寺が行政と防災に関わる事例は、全国的に広がっている」と指摘。自身は医療・福祉関係者との協働や訪問看護ステーションの開設を進めるうち、災害時に医療的ケア児=用語解説=を受け入れられないか検討を始めたと語った。

 その上で「『困っている』という声を届ければ、反応するお寺がきっとある」と強調。お寺は畳敷きのお堂や庭などの資源と、檀家や地域とのネットワークがあるとして、「お寺ができること、お寺にしてほしいことを、皆さんから伝えてほしい」と呼び掛けた。

 小西教授は、災害発生直後から時系列を追って何が起きるのか、自分が何をすべきかをイメージすることが大切だとアドバイス。「頼みたいことと頼めないことを整理して、相手が手伝えることと自分が頼みたいことが一致すれば、助け合いが成り立つ」と語った。

 その後、小西教授は災害時のイメージをゲーム感覚でつかむワークショップ「クロスロード」を実施。「わが子を学校へ迎えに行く途中、生き埋めになった人を見つけた。助けるか、わが子を優先するか」などの〝究極の選択〟について、保護者らが考えを述べ合った。

「お寺はもっと開放的に」

 「大変参考になった。近隣のお寺に声を掛けて、協力してくれる所をたくさんつくることが、保護者の役目だと思う」。終了後、東住吉支援学校PTAの片山初美会長はそう話した。

 片山会長には、自閉症と重度の知的障害のある子どもが2人おり、同校の高等部に通っている。大河内大博住職と出会うまで、お寺へ避難するという発想はなかったが、今では願生寺が月1回開く「親なきあと相談室」にも顔を見せる。

 学習会では、当事者家族にとって必要な備えの一つに、こうした普段からの交流が挙げられた。

 小西かおる教授は、講義の中で「災害時は、専門職の支援をすぐには受けられない」と指摘。初めて会った人たちが、わが子にどんな特性があるのか分かるよう、保護者は日常の生活状況や注意点などを伝えるツールを準備し、学校や福祉施設とも共有しておく必要性を説いた。

学習会で講義に臨む大河内住職(左)と小西教授= 12 日、東住吉支援学校
学習会で講義に臨む大河内住職(左)と小西教授= 12 日、東住吉支援学校

 大河内住職が医療的ケア児の受け入れを目指し、防災や医療・看護の専門家を交えて進める「願生寺防災プロジェクト」も、交流に主眼がある。当事者家族や地域住民が参加する懇話会を、今年3月と8月に開催。来春にも住民参加型のワークショップを行う計画だ。

 学習会で大河内住職は、当事者家族について「自力で避難生活をする以外に選択肢がなく、備えについてあまり考えたくないという傾向がある」と分析。一方の地域住民は、要支援者もキーパーソンも高齢者という〝老老防災〟が見受けられるとして「行政主導の地域防災には限界がある」と語った。

 当事者家族と地域住民の間を取り持つには、お寺はそのいずれかから門をたたかれなくとも、開いておく必要がある。

 学習会に参加した保護者の岩瀬明美さんは「防災で困っていることや不安に思っていることを口に出せたことで、気持ちが楽になった」と振り返り、「お寺は聖地というイメージが強い。もっと開放的になって、声を掛けやすい雰囲気をつくってほしい」と求めた。

 甲斐俊夫校長は「障害のある子たちは災害時、行き慣れている所に行くことになる。宗派を問わず、ご家庭と日頃のお付き合いをしていただけるようなお寺が増えれば」と話した。

【用語解説】医療的ケア児

 人工呼吸器や胃ろうなどを使用し、 痰(たん)の吸引や経管栄養などの医療的ケアが日常的に必要な児童。厚生労働省科学研究班の報告では、2017(平成29)年時点で全国に約1万8千人いると推計されている。社会全体で生活を支えることを目的に、国や自治体に支援の責務があると明記した医療的ケア児支援法が21年6月に成立、9月に施行された。

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