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福祉施設で線香作り 千葉で「看仏連携」前進

2023年5月13日 | 2024年1月26日更新

※文化時報2023年3月24日号の掲載記事です。

 浄土真宗本願寺派の若手僧侶3人が2月20日、NPO法人「わ」(千葉県九十九里町)が運営する有料老人ホーム「ぴあ」とデイサービス「結」を訪問し、線香作りや仏教紙芝居を通して、高齢者や看護スタッフらと交流した。僧侶と医療・福祉職がタッグを組む「看仏連携」を目指した活動で、入居者や利用者からは「若いお坊さんが来てくれてうれしい」と好評。僧侶らは予想外の歓迎に手応えを感じている。(山根陽一)

線香作りに夢中になる高齢者たち(潮さん提供)
線香作りに夢中になる高齢者たち(潮さん提供)

「縁起悪い」は杞憂

 訪問したのは西光寺(同県市原市)の吉弘一秀副住職(39)、無量寺(千葉市美浜区)の金山龍成副住職(37)、龍昌寺(同県浦安市)の石塚龍悠住職(36)。企画した「わ」副理事長で看護師の潮礼佳さんと、2018(平成30)年にイベントで知り合った。

 新たな布教・伝道の在り方や社会活動を試みる若手僧侶と、心のケアの必要性を感じていた看護師の思惑が一致。僧侶らが昨年夏のお盆の時期に、初めて「わ」の福祉施設を訪問していた。潮さんには当初、「葬式でもないのにお坊さんが来るのは、縁起が悪いと思われるかもしれない」との不安があったが、やってみると「杞憂に終わった」と話す。

世間話から死生観まで

 今回のメインは線香作り。30代の僧侶たちが気さくに声を掛けながら、高齢者に作り方を教えた。お香の原料でつなぎになるタブ粉とビャクダン、シナモンなどの香料を水に溶かしてこね固め、数日後に切り取れば、オリジナルの香りがする線香が完成する。

 自分で切り取るため、「線」だけではなく、さまざまな形ができる。石塚住職は「大まかな形を作ってから細部を考える方、思い悩んで始める方と、それぞれの個性が出る。皆さん生き生きしており、これを機に仏事に関心を持ってもらいたい」と話した。

動物の形をしたオリジナル線香(潮さん提供)
動物の形をしたオリジナル線香(潮さん提供)

 金山副住職は「作業や雑談をしながら、明るい表情や笑顔に触れることができ、心温まる時間を過ごせた。世間話から死生観まで、幅広い話ができる存在と思ってもらえれば」と語った。

 吉弘副住職は、仏の教えを説く自作の仏教紙芝居を披露。分かりやすく伝わるよう、ゆっくりめくって大きな声で話すことを心掛けた。

仏教の教えを紙芝居で説く吉弘副住職
仏教の教えを紙芝居で説く吉弘副住職

 「特定の宗派の僧侶が福祉施設で話していいのかと思ったが、入った瞬間に温かい空気を感じ、不安は吹き飛んだ。とても話しやすかった。今日の体験は大きな支えになる」と、自信を得たようだ。

スタッフから「待望論」

 2回目の「看仏連携」を終え、潮さんは「僧侶の存在感を残しつつ、心置きなく話しかけやすい雰囲気をつくることが重要」とした上で「こうした動きを積み重ねれば、僧侶と医療・福祉職がお互いに打ち解け、より良い方向に進む」と話す。

看仏連携を進める看護師の潮礼佳さん
看仏連携を進める看護師の潮礼佳さん

 すでに施設のスタッフらからは「定例行事にしてほしい」との要望が上がっている。現場のモチベーションを高めるためにも、僧侶のサポートに期待は高まる。

 ただ、僧侶の訪問はほとんどボランティア。潮さんは「今後は報酬を支払うための財源の確保が課題になるだろう」と話した。

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