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奨学金で子ども食堂 大正大3年・大畠さん

2023年5月27日

※文化時報2023年4月11日号の掲載記事です。

 大正大学(髙橋秀裕学長、東京都豊島区)心理社会学部臨床心理学科3年の大畠花帆さん(20)が今月下旬、臨済宗妙心寺派養源寺(山田元文住職、東京都文京区)で寺庭の山田直子さんと子ども食堂を開設する。大学の奨学金制度を活用し、子育ての悩みを相談できる少人数の居場所づくりを目指す。大学側は学生の自主性を尊重し、教職員が運営に関わらないというユニークな取り組みだ。(山根陽一)

妙心寺派養源寺が会場

 3月25日、養源寺本堂の下にある会議室で、プレオープンイベントが行われた。野菜が豊富な「いろどりそぼろ丼弁当」を、近隣の子どもたちと保護者に提供。食後はタブレットでのビンゴゲームなどを楽しんだ。近隣住民による服のリサイクルマルシェも同時開催した。

プレオープンで弁当を食べる参加者たち
プレオープンで弁当を食べる参加者たち

 寺庭の山田さんは地元で民生委員を務めており、この日の運営には大畠さんの呼び掛けで集まった学生有志のほか、他の民生委員や文京区社会福祉協議会の職員らも参加。今後は高校生など若い世代にも協力を働き掛けていくという。

心理師目指し進学

 大畠さんは高校時代から発達障害や食行動の異常など子どもが抱える問題に関心を持ち、公認心理師の資格取得を目指して大正大学心理社会学部に進学した。

 社会課題の解決をテーマとしたさまざまな授業を受けるうち、家族の在り方について考える機会が増えた。その中で、貧困問題などを地域連携で解決する手段として子ども食堂の存在を知ったという。

大畠花帆さん
大畠花帆さん

 入学後、大学が運営に携わる落語カフェ「ガモール志學亭」でアルバイトをしている時に、山田さんと知り合った。山田さんは、長男である住職とともにヨガ教室や落語会を行ってきたが、大畠さんの子ども食堂への熱意を感じ、自坊を提供することにしたという。

子ども食堂が開設される養源寺=東京都文京区
子ども食堂が開設される養源寺=東京都文京区

 大畠さんは「地域にはいくつか子ども食堂はあるが、少人数で温かい交流ができる場を目指す。一緒に料理ができるような雰囲気をつくりたい」と語る。

大学独自の制度活用

 子ども食堂の運営資金は大正大学独自の人材育成奨学金を活用する。学部2~4年生、大学院2~3年生のうち、成績優秀で修学意欲があり将来に期待できる人物を対象に、上限20万円を補助する制度だ。使途は学業だが、今回のような学外での学びについても使えるという。

 プレオープンイベントの「いろどりそぼろ丼弁当」は、「ガモール志學亭」で働くスタッフが経営する飲食店の協力で無償提供してもらったが、今後は食材などを自前で調達するため、さらなる資金が必要だ。

ビンゴゲームを楽しむ参加者たち
ビンゴゲームを楽しむ参加者たち

 大畠さんは「社協からの補助金を得られるよう、地域の関係者とともに社会貢献につながる活動でアピールしたい」と意欲を燃やし、「自分自身の意思だけではできない。山田さんをはじめたくさんの人に出会い、協力があったことが原動力になっている」と話す。

 大正大学は天台宗、真言宗豊山派、真言宗智山派、浄土宗の設立4宗派と時宗が共同で運営する。養源寺の宗派とは異なるが、山田住職は「社会問題の解決に宗派は関係ない。寺院は場所を提供し、運営する大畠さんやスタッフの活動をサポートするのが役割」と語る。

 大正大学広報部は「高校時代からの興味と大学の学びを融合させた上で、奨学金制度を有効活用した素晴らしい取り組み。自主的に一歩一歩進めている大畠さんの活躍を、大学としても応援したい」としている。

【用語解説】公認心理師

 文部科学省と厚生労働省が管轄する国家資格。保健医療、福祉、教育などの分野で、心理学に関する専門的知識や技術を用い助言や指導を行うことができる。一般財団法人日本心理研修センターによると、2022年12月末現在で6万9229人が登録している。

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