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「救おうとするな」スウェーデンの司祭が講演

2023年5月29日

※文化時報2023年4月21日号の掲載記事です。

 全国青少年教化協議会(理事長・服部秀世曹洞宗宗務総長)付属の教育研究機関である臨床仏教研究所は12日、東京グランドホテル(東京都港区)で公開研究会を開いた。スウェーデン・ルーテル教会のグスタフ・エリクソン司祭が「いのちのケアの実践」をテーマに講演し、神仁(じん・ひとし)同研究所研究主幹と対話を行った。

講演するエリクソン司祭
講演するエリクソン司祭

 エリクソン司祭はスウェーデンの病院、刑務所、軍隊でチャプレン=用語解説=として活動してきた。その経験に基づき、人生に行き詰まった人と向き合う時に最も重要なのは「救おう」とせず「救われる時を共に過ごす」姿勢だと強調した。

 最近では自殺防止の電話相談も担当しているが「すぐに答えを出さない。吐露する声を聞き続ける。対話すること自体に意味がある」と指摘した。また、認知症のケアに有効なのは音楽であり、「時には演奏家を招いて賛美歌などを一緒に歌う」と語った。

 エリクソン司祭はプロテスタントの家庭に育ったが、10代の頃は悩みを抱え、ヒンドゥー教やインド仏教に救いを求めてネパールに渡った。1990年代には日本で曹洞宗の西嶋愚道師に出会い、禅の修行に傾倒。現在も禅の精神を取り入れた瞑想(めいそう)をケアの中で実践している。

 臨床仏教師=用語解説=の育成に尽力する神研究主幹は「宗教は異なるが、人の心に寄り添うという目標は同じ」とした上で「利己や思い込みを捨てて、あるがままを受け入れる。聖職者は悩みや苦しみを抱える人の伴走者であることが重要」と語った。

【用語解説】チャプレン(宗教全般)

 主にキリスト教で、教会以外の施設・団体で心のケアに当たる聖職者。仏教僧侶などほかの宗教者にも使われる。日本では主に病院で活動しており、海外には学校や軍隊などで働く聖職者もいる。

【用語解説】臨床仏教師(りんしょうぶっきょうし=仏教全般)

 医療や福祉、被災地などの現場で、生老病死にまつわる苦に向き合いながらケアを行う仏教者。座学、ワークショップ、実践研修を経て臨床仏教研究所が資格認定する。従来キリスト教関係者が手掛けてきた臨床牧会教育プログラムや、台湾の臨床仏教宗教師の研修制度を踏まえ、2013年に創設された。

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