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包括とお寺がスマホ相談会 「多世代交流」へ連携

2023年6月3日

※文化時報2023年4月14日号の掲載記事です。

 団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になり、社会保障費の増大が懸念される「2025年問題」が間近に迫った。医療・福祉と連携して、高齢者の暮らしをサポートする地域包括支援センター=用語解説=の役割はますます重要になる。そんな中、お寺とタッグを組んで多彩なイベントを展開し、「多世代交流」と高齢者の居場所づくりに取り組むセンターがある。(奥山正弘)

萬福寺で開かれたスマホ相談会
萬福寺で開かれたスマホ相談会

 2月16日午後、京都市南区の西山浄土宗萬福寺(長野諦縁住職)。70代後半から80代の高齢者14人がスマートフォンを手に集まり、「シニア向けスマホ相談会」に参加した。大学生や高校生から、写真をメールで送る方法や、無料通話アプリ「LINE」などの使い方をマンツーマンで教わった。

 このイベントを萬福寺と共催したのが、地区を担当する久世地域包括支援センター(千木仁美センター長)。南区の社会福祉協議会と青少年活動センターにも協力を求め、若者のボランティアを集めたという。

 普段は接する機会の少ない孫世代と、世間話を交えながら楽しんで操作を教えてもらった約1時間の相談会。参加した70代の女性は「LINEスタンプの使い方やクッキング動画の見方が分かった。孫の話などもできて楽しかった」と、満足した表情で話した。

きっかけはインスタ

 久世地域包括支援センターは、これまで映画会や演奏会、折り紙教室などを定期的に催し、孤立しがちな高齢者の居場所づくりに取り組んできた。ところがこの3年は、新型コロナウイルスの影響で、休止を余儀なくされるイベントが相次いだ。

 そこで2021(令和3)年4月から、新たなコミュニケーション手段として、画像共有アプリ「インスタグラム」を活用。センターの活動やイベント情報などを精力的に発信した。さらにテレビ会議システム「Zoom(ズーム)」を使い、介護や薬の知識などを紹介している。

千木センター長
千木センター長

 萬福寺との連携も、インスタを通じて実現した。千木センター長が、PRチラシを置いてもらえないかと打診したところ、長野住職が快諾。社協職員や民生委員を含めて長野住職と面談した際、千木センター長の提案で今回のスマホ相談会の開催にこぎ着けた。

 「檀家さんにはスマホを利用する高齢者が多く、外出するきっかけになると思った。お寺は平日、空いていることが多いので、信徒以外の住民も集ってくだされば」と長野住職。相談会は住職就任後、初めて開いたイベントだったという。

 千木センター長は「そもそもの狙いは『多世代交流』。本来なら誰が立ち寄ってもいいお寺という場所を、地域の交流を生み出す拠点にしたい」と語る。

若者に涅槃図説明

 江戸中期の1764(明和元)年に建立されたと伝わる萬福寺。本尊は「火除観音」で知られる聖観音菩薩坐像で、京都・洛西地域の観音霊場第17番札所としても知られる。

包括との連携が進む萬福寺
包括との連携が進む萬福寺

 長野住職は食品会社で約30年、営業職としてサラリーマン勤務をした後、2016(平成28)年に51歳で得度。21年6月、空席だった萬福寺の専任住職に就いた。

 「お寺は地域の文化財であり、宝でもある。人が集わなければ寂しい。ご縁をつなぐ交流の場として、さまざまな形で使っていただき、良さを知ってもらえれば」。地域に密着し、地域に開かれたお寺を目指す長野住職の願いだ。

 スマホ相談会は、釈尊が入滅した2月15日の翌日に開かれたことから、長野住職はボランティアの高校生や大学生に涅槃図を示し、仏教や寺の歴史などを説明した。

長野住職が学生ボランティアに涅槃図について説明する一幕もあった(久世地域包括支援センター提供)
長野住職が学生ボランティアに涅槃図について説明する一幕もあった(久世地域包括支援センター提供)

現代の駆け込み寺に

 今後も久世地域包括支援センターと萬福寺は、スマホ相談会の第2弾や野点、苔玉作り、ヨガ体験など、地域住民を対象としたイベントを開催する計画だ。

 「お寺は一人一人のよりどころ」と考える長野住職は、要望があれば、お寺を不登校の児童生徒に開放して、気楽に過ごしてもらう意向も持っている。困り事があれば気軽に立ち寄れる現代の「駆け込み寺」を理想に掲げている。

長野住職
長野住職

 千木センター長は、将来的に高齢者が増加する地区の人口構成を見据え、「若い人の支えがないと、高齢者は孤立する」と警鐘を鳴らしつつ、「今後もお寺と連携して、地域の財産を再発見する取り組みを進めていきたい」と意気込みを語った。

【用語解説】地域包括支援センター

 介護や医療、保健、福祉などの側面から高齢者を支える「総合相談窓口」。保健師や社会福祉士、ケアマネジャーなどの専門職員が、介護や介護予防、保健福祉の各サービス、日常生活支援の相談に連携して応じる。設置主体は各市町村だが、大半は社会福祉法人や医療法人、民間企業などに委託し運営されている。

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