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介護者カフェで地域づくり お寺に社協が協力

2023年7月3日

※文化時報2023年5月16日号の掲載記事です。

 京都市山科区の浄土宗福應(ふくおう)寺(佐藤文宏住職)が、介護にまつわる悩みやつらさを語り合う介護者カフェ=用語解説=「こころのやすらぎカフェ」を初めて開催した。設立を推進する浄土宗の支援事業を受けた取り組みで、檀信徒と共に、山科区社会福祉協議会の職員や地元高齢者団体の役員らも参加。お寺を拠点に多様な分野が連携し、新たな地域づくりを進めることに期待を寄せた。(大橋学修)

 4月3日に行われた第1回の介護者カフェでは、東京都健康長寿医療センター研究所の岡村毅医師が「認知症ケアの最前線」と題して講演。認知症が発症するメカニズムと予防薬の開発状況を解説した上で、地域包括ケアシステム=用語解説=で安心して暮らせる地域づくりが国によって提唱されていることを紹介した。

 また、認知症や介護に関する根本的な悩みを医療は解決できないと指摘し、「お寺は、弱っていくことを受け入れ、自分らしく生きる力を得ることができる場。地域包括ケアシステムにお寺が加わることが必要」と呼び掛けた。

認知症について解説した岡村毅医師の講演
認知症について解説した岡村毅医師の講演

 講演後には、参加者が2班に分かれてグループトークを行った。それぞれが自己紹介をしながら、介護者カフェに参加した理由を話し、家族に認知症があることが分かったきっかけや、それに伴う悩みなどを語り合った。

生協も連携に意欲

 今回参加した山科区社会福祉協議会の三﨑花さんは、福應寺からの協力要請によって、お寺が地域の拠点として機能することに気付いたという。「地域と事業者をつなげ、福祉のまちづくりを行う場にできる」。そこで、思うように買い物ができない高齢者のために、移動販売を手掛ける京都生活協同組合に声を掛けた。

 その京都生協の中山義秋移動店チーフも、介護者カフェに参加した。京都生協は現在、京都府内100カ所弱で移動店を開設している。「買い物難民」と呼ばれる高齢者のための取り組みを進めるべきだとする組合員の声を受けて始めた。

 中山チーフは「生協をインフラとして活用し、地域づくりを進めていただくことで、難しい黒字化も実現する」と話し、「最近は、お寺が地域と連携した取り組みが聞かれるようになっている。福應寺での移動店開設はこれから協議していくが、共に地域づくりが進められれば」と語った。

 山科社協からの声掛けで参加した地元の陵ヶ丘健康長寿推進協議会役員の小長谷禎一さんも、お寺での居場所づくりに期待感を示した。地域では、一人暮らしの高齢者が増加しており、思いを打ち明ける場の必要性を感じているからだ。

介護者カフェで行われたグループトーク
介護者カフェで行われたグループトーク

 悩みや寂しさを語りたい人が、小長谷さんに頻繁に電話する。「一日に何度も電話があるが、個人では限界がある」。そのため、有志で居場所づくりを行おうと話し合いを進めているという。

 小長谷さんは「私の住まう地域から福應寺に集まるのは難しい。近隣のお寺で、居場所づくりをしてほしい」と話した。

知識なくても開催可

 福應寺での介護者カフェ開催を発案したのは、佐藤宏昭(こうしょう)副住職。浄土宗青年会の仲間の会員制交流サイト(SNS)を見て、興味を持った。「介護の経験はないが、お寺の間口を広げるのに適している。せっかく宗が支援してくれるのだから、開催しない手はない」と考えた。

 昨年11月に宗が開催した実践講座に参加。浄土宗総合研究所の東海林良昌氏から支援を受けながら、山科社協や地域団体に協力を求めた。知識はなくても4カ月ほどの準備で初開催にこぎ着けたという。

 佐藤文宏住職は「介護で摩擦があっても、互いに理解することが大切。語り合い、和やかな世界にしていきたい」と話している。

【用語解説】介護者カフェ

 在宅介護の介護者(ケアラー)らが集まり、悩みや疑問を自由に語り合うことで、分かち合いや情報交換をする場。「ケアラーズカフェ」とも呼ばれる。主にNPO法人や自治体などが行い、浄土宗もお寺での開催に取り組んでいる。孤立を防ぐ活動として注目される。

【用語解説】地域包括ケアシステム

 誰もが住み慣れた地域で自分らしく最期まで暮らせる社会を目指し、厚生労働省が提唱している仕組み。医療機関と介護施設、自治会などが連携し、予防や生活支援を含めて一体的に高齢者を支える。団塊の世代が75歳以上となる2025年をめどに実現を図っている。

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