2023年8月5日
※文化時報2023年6月20日号の掲載記事です。
一般財団法人お寺と教会の親なきあと相談室(小野木康雄代表理事)の支部を開設している神奈川県逗子市の高野山真言宗佛乘院(齋藤真佑住職)は11日、4回目の「お寺で休息~語らいカフェ」を開催した。カフェタイムに先立ち、同財団の藤井奈緒理事兼アドバイザーが講演。20人が参加し、障害のある子やひきこもりの子の親が面倒を見られなくなる「親なきあと」の問題について考えた。
佛乘院は昨年10月から「語らいカフェ」を開いており、地元の逗子市社会福祉協議会、葉山町社会福祉協議会、不登校・ひきこもり相談室「ヒューマン・スタジオ」などの協力を得ている。今回は逗子市社協との共催で、「みんなで考える 親なきあとのこと」と題する催しにした。
藤井理事は、重度の知的障害のある長女(20)と、注意欠陥多動性障害(ADHD)の診断を受けた次女(14)の母親。講演では、親なきあとに親の代わりを丸ごと引き受けてくれる人は存在しないと指摘した上で、「みんなで支えてもらえるよう、親が元気なうちにできることをしておくことが大切」と語り掛けた。
とりわけ、障害のある子のきょうだいに関して「家族なら世話をして当たり前、という考え方は通用しない。きょうだいにも自分の人生があるので、一方的に期待すべきではない」と述べた。
また、お寺と教会の親なきあと相談室の特長の一つとして、「気持ちの通じ合う親同士が出会えること」を挙げ、「お寺の住職は、さまざまなご縁をつなぐ『扇の要』。いつでも連絡できて寄り添ってくれる存在だ」と話した。
講演後には、逗子市社協の担当者らが成年後見制度=用語解説=や日常生活自立支援事業=用語解説=などについて情報提供を行ったほか、支援者らも簡単な自己紹介をして、当事者との顔の見える関係づくりに努めた。
語らいカフェは海の見える明るい雰囲気の客殿で行われ、参加者らは大幅に時間を超過しながら、心ゆくまで語り合った。「不安だったことが、少しクリアになった」「仲間づくりの大切さを改めて感じた」といった好意的な感想が寄せられた。
齋藤住職は「大勢来てくださって、本当に良かった。藤井理事の講演や逗子市社協の情報提供で仕入れた知識を基に、カフェタイムでの語り合いが深まっていたようだ」と、手応えを語った。
逗子市社協の飯島かんなさんは「地域の方々と共に『親なきあと』について考えられて、とてもいい時間だった」と振り返り、「お寺は地域に開放されていて、癒やしを得られる場。公的支援との間に入ってもらうことで、相談の敷居が低くなることを期待したい」と話していた。
【用語解説】成年後見制度(せいねんこうけんせいど)
認知症や障害などで判断能力が不十分な人に代わって、財産の管理や契約事を行う人(後見人)を選ぶ制度。家庭裁判所が選ぶ法定後見制度と、判断能力のあるうちに本人があらかじめ選んでおく任意後見制度がある。
【用語解説】日常生活自立支援事業
認知症高齢者や知的障害者、精神障害者で判断能力が不十分な人の日常生活を、社会福祉協議会の専門員や生活支援員らが支える制度。契約に基づいて、福祉サービスの利用援助や日常の金銭管理、通帳や証書などの預かりサービスなどを行う。