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米沢でも看仏連携 松原寺「まちの保健室」盛況

2023年11月18日

※文化時報2023年9月26日号の掲載記事です。

 山形県看護協会(若月裕子会長)は10日、曹洞宗松原寺(しょうげんじ)(越中谷(えっちゅうや)恒道住職、山形県米沢市)でまちの保健室=用語解説=を開いた。お寺と協力してまちの保健室を開催した看護協会は大阪府、鹿児島県、熊本県に次いで4府県目で、東日本では初めて。同寺の恒例行事「チャリティー寄席」に合わせた初の試みで、落語を聞き終えた11人が健康チェックを受け、看護師とざっくばらんに語り合った。(主筆 小野木康雄)

 看仏連携研究会代表で臨済宗妙心寺派僧侶の河野(かわの)秀一氏が仲介。昨年9月以降、山形県看護協会の役員らと松原寺の妻鳥(めんどり)紘明副住職、浄土宗西蓮寺(米沢市)の伊藤竜信住職が、互いを知るための学習会や打ち合わせを行ってきた。

 この日は県看護協会置賜(おきたま)支部(伊藤加代子支部長)の看護師ら8人が本堂1階の駐車場でスタンバイ。寄席が終わった午後3時半ごろから、順次訪れた檀信徒や近隣住民らに血圧や血管年齢などを測定し、健康相談に乗った。

寄席帰りに健康チェックを受ける人たちでにぎわった「まちの保健室」=10日、山形県米沢市の松原寺
寄席帰りに健康チェックを受ける人たちでにぎわった「まちの保健室」=10日、山形県米沢市の松原寺

 近くに住む須藤肇一さん(79)は「以前から運動不足が気になっており、体のことが分かってよかった。寄席のついでに来られたのもありがたい。こういう機会があればまた来たい」と笑顔で話した。

 妻鳥副住職は「あまりお寺らしくない行事を通じて、敷居を高くせず、なじみを持ってもらうことが大事だと思っている。できれば継続させたい」と語った。

傾聴力と信頼感に期待

 松原寺の妻鳥紘明副住職は、東北大学で研修を受けた日本臨床宗教師会の認定臨床宗教師=用語解説=。2019年からは地元の米沢市立病院で、緩和ケアチームの一員として、傾聴を通して患者との対話を続けている。医療者と日ごろから連携しており、現場からの信頼は厚い。

 一方、山形県看護協会の若月裕子会長も米沢市立病院で看護部長として勤務した経験がある。15年から県の在宅医療推進事業に参加。「医療と介護のなせばなるプロジェクト」として、病院と地域をつなぐ多職種連携を図ってきた。

 プロジェクトに関心を持った妻鳥副住職が勉強会に参加したのを機に、若月会長も宗教者の力に注目するようになった。「相手を尊重し、心を安定させる話の聴き方ができる」。緩和ケアで患者から死にまつわる問いが出てきたとき、医療者がなかなか踏み込めないことに課題を感じていたという。

 こうした下地があった上で、大阪府看護協会の取り組みに着目した若月会長が、山形県内のお寺でもまちの保健室ができないかと考えた。看仏連携を推進する河野秀一氏が間に立ち、昨年9月に1回目の打ち合わせを行った。

開催に向けて尽力した河野氏、若月会長、妻鳥副住職(左から)
開催に向けて尽力した河野氏、若月会長、妻鳥副住職(左から)

 河野氏は、地域包括ケアシステム=用語解説=ではケアの視点が「治す」から「支える」に変わったと指摘。「長らく地域に根差しているお寺ならではの信頼感をもって、お寺は地域住民のコミュニティーになり得る」と訴えた。

 県看護協会置賜支部の伊藤加代子支部長は、まちの保健室がアドバンス・ケア・プランニング(ACP)=用語解説=に展開することを見据えている。「健康相談をきっかけに、お寺での身近な集まりでも看護師に相談してもらえるような活動ができれば」と話した。

【用語解説】まちの保健室

 学校の保健室のように、地域住民が健康などさまざまな問題を気軽に相談できる場所。図書館や公民館、ショッピングモールなどに定期的に設けられ、看護師らによる健康チェックや情報提供が行われる。病気の予防や健康の増進を目的に、日本看護協会が2001(平成13)年度から展開している。

【用語解説】臨床宗教師(りんしょうしゅうきょうし=宗教全般)

 被災者やがん患者らの悲嘆を和らげる宗教者の専門職。布教や勧誘を行わず傾聴を通じて相手の気持ちに寄り添う。2012年に東北大学大学院で養成が始まり、18年に一般社団法人日本臨床宗教師会の認定資格になった。認定者数は23年5月現在で212人。

【用語解説】地域包括ケアシステム

 誰もが住み慣れた地域で自分らしく最期まで暮らせる社会を目指し、厚生労働省が提唱している仕組み。医療機関と介護施設、自治会などが連携し、予防や生活支援を含めて一体的に高齢者を支える。団塊の世代が75歳以上となる2025年をめどに実現を図っている。

【用語解説】アドバンス・ケア・プランニング(ACP)

 主に終末期医療において希望する治療やケアを受けるために、本人と家族、医療者らが事前に話し合って方針を共有すること。過度な延命治療を疑問視する声から考案された。「人生会議」の愛称で知られる。

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