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ダウン症を伝えたい 共生へ「街に出よう」

2024年1月5日

※文化時報2023年11月28日号の掲載記事です。

 ダウン症や知的障害のある人のことを広く知ってもらい、誰もが共生できる社会を目指そうと、「第4回日本ダウン症会議・第5回日本ダウン症学会学術集会」の合同集会が11、12の両日、大阪府門真市の門真市民文化会館ルミエールホールで開かれた。「街に出よう~人・社会との絆を求めて」をテーマに、講演や演題発表など36のプログラムがあり、当事者や家族、医療・福祉関係者ら約400人が事前登録を行った。(主筆 小野木康雄)

 公益財団法人日本ダウン症協会と日本ダウン症学会が主催した。

 このうち11日の「社会資源を生かして豊かな成人期を送る」では、障害のある子の面倒を親が見られなくなる「親なきあと」の問題を中心に、ダウン症のある子と共に親たちが登壇し、意見を交わした。

「親なきあと」が議題になった成人期のプログラム
「親なきあと」が議題になった成人期のプログラム

 37歳の息子がマクドナルドで15年間、アルバイトとして働いている布留川正博・同志社大学名誉教授は「親子とも外に出て、いろいろな人とつながることが重要だ」と強調。44歳の妹と暮らす落合清子さんは両親の看取(みと)りの後、福祉関係のさまざまな手続きに追われた体験を引き合いに、備えの必要性を訴えた。

 福祉職として働く田中信子さんは、事例に基づいて計画相談支援=用語解説=の使い方を紹介。ダウン症ではないものの、娘に重度の知的障害がある藤井奈緒さんは「日本の社会福祉は家族ありきで成り立ってきた背景がある」と指摘し、宗教者による伴走型支援に期待を寄せた。

 ポスター展示の会場には、ダウン症のある子どもたち50人以上が廃材を利用して制作したオブジェ「キボウの木」が飾られた。12日には市民公開講座として、ダウン症のあるお笑いコンビがステージに上がった。

ポスター展示の会場に飾られたキボウの木
ポスター展示の会場に飾られたキボウの木

「胎児の人権」提唱 新型出生前診断に懸念

 11日には大会長を務めた玉井浩・大阪医科薬科大学名誉教授が、大会テーマと同じ演題で講演した。ダウン症のある人もない人も共生できる社会を実現するには、社会の理解不足を解消することが必要だと強調。とりわけ新型出生前診断(NIPT)=用語解説=の運用に懸念を示し、「障害のある胎児を排除するための手段として使われるべきではない」と述べた。

大会長講演に臨む玉井名誉教授
大会長講演に臨む玉井名誉教授

 玉井名誉教授は、NIPTを受ける妊婦は全体の約1割であるにもかかわらず、「みんな受けている」「陽性の人の多くは妊娠を諦めている」という同調圧力が起こり得ると指摘。受ける人には「生まれてくる子が健康であってほしい」との願いと、命の選択をしようとする葛藤があるとして、「まずダウン症のことを知るのが大事」と訴えた。

 その上で、障害者理解や人権教育の一環として、早い段階から広く国民に情報提供すべきだと問題提起。「障害があることは不幸ではない、と捉える社会へのパラダイムシフト(価値観の転換)が必要だ」と呼び掛けた。

 また、「胎児の人権」という概念を提唱。受精卵を人と見なすカトリックなどを例に、妊婦と同様、胎児にも当事者の一人として人権があるとの考え方を示し、「胎児には、中絶につながる可能性のある障害の有無を誰にも知られたくない、という権利があるのではないか」と述べた。

【用語解説】計画相談支援

 障害者が福祉サービスを受けられるようにするための支援。相談を受けたり関係機関と調整したりして、市町村に届け出る「サービス等利用計画」を作成する。計画が適切かどうかを検証し、見直すことなどもサポートする。

【用語解説】新型出生前診断(NIPT)

 妊婦の血液から胎児の染色体異常を調べる手段。日本ではダウン症など3種の疾患を対象に、2013(平成25)年に始まった。受診前後の「遺伝カウンセリング」や正確な情報提供を行うため、日本医学会が400超の医療機関を実施施設として認証している。産婦人科医のいない非認証施設でも検査が行われていることや、障害・疾患への偏見を助長する可能性があることなどが問題となっている。

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