2024年3月2日 | 2024年7月8日更新
※文化時報2024年2月16日号の掲載記事です。
大阪府柏原市の浄土宗安福寺(大﨑信人住職)が地元の大阪府警柏原署と協力し、特殊詐欺の被害防止活動に取り組んでいる。本堂で開いた防犯教室をきっかけに、地元のせんべいメーカーも加わって、啓発商品の開発を企画。防犯を切り口に、地域連携の幅を広げている。(主筆 小野木康雄)
1月23日午後、柏原署の若手署員2人が安福寺を訪れた。手にしていたのは、市販の袋詰めせんべい。啓発商品として作るせんべいのパッケージに、商品名を書いてほしいと大﨑住職に依頼した。
その名も「だまされませんべい」(仮称)。管内の高齢者に特殊詐欺への注意を促すため、インパクトのある啓発商品にしたいという。
署員たちによれば、柏原市内の高齢者宅を訪れると、必ずといっていいほど常備されているのが地元のせんべいメーカー、いたに萬幸堂のせんべい。今回は、素朴な甘さが特長の玉子せんべいを使い、警察や防犯などにちなんだオリジナルの焼き印を押す計画だ。
安福寺は、2015(平成27)年の大坂夏の陣400年に合わせ、境内に慰霊塔がある関係から、記念の玉子せんべいを同社で作ったことがある。
そのときのせんべいを参考に、大﨑住職と署員たちが相談。御朱印をイメージしたデザインを試作することで話がまとまった。3月ごろを目標に完成させたいという。
安福寺と柏原署の連携が始まったのは昨年9月。障害のある子やひきこもりの子の「親なきあと」について考える「親あるあいだの語らいカフェ」と介護者カフェ=用語解説=に合わせて行った防犯教室だった。
元々は大﨑住職が、街頭に長時間立っていた警察官に「何やってはるんですか?」と声をかけ、特殊詐欺の警戒に当たっていると聞かされたことから、「ぜひお寺で話して」と頼んだことがきっかけとなった。
それ以来、署員たちも大﨑住職と交流を続けている。地域のさまざまな企業や店舗に防犯活動への協力を呼び掛ける際、警察だと名乗ると身構えられてしまうこともあるが、お寺から紹介されたと伝えると安心してもらえるのだという。
署員の一人は「警察というとハードルは高いが、特にお年寄りはお寺に親しみがある。お寺と協力して防犯に取り組むのがいいと思う」。別の署員は「地元の歴史や情報など、警察が知らないことも多く知っておられるので、頼りになる」と期待を示した。
2023年版の警察白書によると、全国の警察官定員の総数は約26万人。一方で同年版の宗教年鑑によると、仏教系教師の人数は約34万人に上っており、警察官よりも僧侶の方が約8万人多い。
大﨑住職は「お参りのときにひと言『特殊詐欺に気を付けてくださいね』と付け加えるようになった。全国のお坊さんが、警察との連携を考えていただければ」と話している。
【用語解説】介護者カフェ
在宅介護の介護者(ケアラー)らが集まり、悩みや疑問を自由に語り合うことで、分かち合いや情報交換をする場。「ケアラーズカフェ」とも呼ばれる。主にNPO法人や自治体などが行っているが、浄土宗もお寺での開催に取り組んでいる。孤立を防ぐ活動として注目される。