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福祉仏教ピックアップ

障害ある子の未来考え、お寺でゆっくり語り合う

2024年5月31日

※文化時報2024年4月23日号の掲載記事です。

 障害のある子やひきこもりの子を持つ親がわが子の面倒を見られなくなる「親なきあと」について語り合おうと、京都市東山区の浄土宗西山禅林寺派良恩寺(小島観修住職)は13日、「親あるあいだの語らいカフェ」を開いた。スタッフを含めて17人が参加し、春の風が通る本堂で穏やかな午後のひとときを過ごした。(主筆 小野木康雄)

 親あるあいだの語らいカフェは、宗教・宗派を超えた取り組みとして、一般財団法人お寺と教会の親なきあと相談室(京都市下京区)が2022年から全国の宗教者に開催を呼び掛けている。良恩寺で行われるのは今回が初めて。

 参加者は、障害のある子を連れた両親や、地元の地域包括支援センター=用語解説=の職員などの支援者、親なきあとに関心のある檀家、他のお寺の住職といった多様な顔触れ。自己紹介をし合った後、小島住職がお経を上げる時間も設けられた。

(画像①:お経を上げる小島住職)
お経を上げる小島住職

 重度の知的障害と自閉スペクトラム症(ASD)=用語解説=の次女(17)がいる会社員の杉本博子さん(57)は、京都市南区の真言宗泉涌寺派城興寺(上原慎勢住職)での語らいカフェにも参加した経験がある。

 杉本さんは「お寺に縁がないので最初はハードルが高く感じられたが、1回来ると平気になった。さまざまな親御さんと知り合いになれるし、困りごとは異なっても情報を得られることがある。来られる範囲で来たい」と話した。

 支援者の一人は「膝を交えて語り合えるし、学びながら気付きの得られるいい機会。中身の濃い時間となった」と振り返り、小島住職は「これからも交流の場として集っていただければ」と話した。

(画像②アイキャッチ:お堂で輪になって語り合う参加者ら)
お堂で輪になって語り合う参加者ら

 良恩寺では今後、8月を除く偶数月の第2土曜の午後1時半~3時半に語らいカフェを開催する。次回は6月8日。

語らいカフェ 多様な魅力

 親あるあいだの語らいカフェは、一般財団法人お寺と教会の親なきあと相談室が取り組む主要事業の一つだ。財団の支部として登録する寺院・宗教施設17カ所のうち、12カ所が開催している。

 特長は、開催方法や頻度が各支部の裁量に委ねられていること。地域の実情や当事者家族が何を求めているかによって、臨機応変に対応する必要があるからだ。

 講演会やイベントを併催したり、語り合いに特化したり、同じ語り合いでもテーブルに分かれたり全員が車座になったりと、支部ごとに特色ある場が醸成されていく。

 良恩寺の1回目の語らいカフェは、当事者家族かどうか、専門知識があるかないかを問わず、さまざまな立場の人が集まった。全員が輪になって座り、ある当事者家族の悩み相談を中心に話題が展開。参加者それぞれがしっかり耳を傾け、思いやアドバイスを伝えた。

 良恩寺は、室町時代の1564(永禄7)年に創建された京都の知られざる名刹(めいさつ)。本尊阿弥陀如来像は、平安時代に小野篁(たかむら)または源信によって作られたと伝わる。人々からさまざまな思いを受け止めてきた歴史のある本堂を開放したことが、落ち着いた場づくりにいい影響を与えたようだ。

 小島観修住職は、檀家が抱える問題に対応できればと「文化時報 福祉仏教入門講座」を受講し、お寺を開く手段として語らいカフェに着目した。「財団本部の専門家が支えてくれるので心強い。住職は場を提供し、いろいろな方々がご縁を結んで上手に交流できるよう専念すればいいのだと分かった」と、手応えを感じていた。

(画像③:のぼりが掲げられた浄土宗西山禅林寺派良恩寺)
のぼりが掲げられた浄土宗西山禅林寺派良恩寺

【用語解説】地域包括支援センター

介護や医療、保健、福祉などの側面から高齢者を支える総合相談窓口。保健師や社会福祉士、ケアマネジャーなどの専門職員が、介護や介護予防、保健福祉の各サービス、日常生活支援の相談に連携して応じる。設置主体は各市町村だが、大半は社会福祉法人や医療法人、民間企業などに委託し運営されている。

【用語解説】自閉スペクトラム症(ASD)

コミュニケーションや対人関係の困難と、特定のものや行動への強いこだわり、限られた興味などの特徴がみられる発達障害。かつては自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー症候群などの名称で呼ばれていたが、アメリカ精神医学会が2013年に発表した精神疾患の診断基準(DSM)第5版からは自閉スペクトラム症に統一された。約100人に1人いるとされる。

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