2024年8月26日
※文化時報2024年6月28日号の掲載記事です。
改正子ども・若者育成支援推進法が5日の参院本会議で可決・成立した。国や自治体が「ヤングケアラー」の支援に努めることを明確に打ち出した法改正である。青少年に関わる機会の多寡にかかわらず、宗教者はぜひ注目してほしい。
ヤングケアラーは、障害や病気のある家族を介護したり、家事を行ったりする子ども・若者のことだ。ケアによって消耗し、学校生活や進路選択などに支障をきたすケースが多々あるのに、なかなか表面化しにくい実態がある。厚生労働省と文部科学省が2021年に公表した全国調査では、中学2年生の5.7%(約17人に1人)、全日制高校2年生の4.1%(約24人に1人)が該当した。
改正法では、ヤングケアラーを「家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者」と法律上初めて定義し、さらに年齢を問わず支援に努めることを定めた。支援団体も高く評価している。
21年に出版された『ヤングでは終わらないヤングケアラー きょうだいヤングケアラーのライフステージと葛藤』(仲田海人・木村諭志編著、クリエイツかもがわ)は、障害のある人のきょうだいの声を集めた本である。タイトルが示唆する通り、ケアに当たるきょうだいは、親よりも長期間にわたって障害のある本人と向き合う必要に迫られる。
子どものころに「面倒見て偉いね」と言われた何げない褒め言葉が「親代わりにならなければならない」という重荷になる。親は本人にかかりきりで、誰にも頼れず孤立してしまう―。進学、就職、結婚などを諦めるきょうだいもいることを、同書は伝えている。
相談窓口や支援機関は整いつつあり、今回の法改正によってその動きは加速するだろう。お寺をはじめとする宗教施設も、名乗りを上げていい時期なのではないか。
家族の問題は家族で解決すべきだとか、他の家庭の問題にむやみに口を挟んではならないといった旧来型の家族観は、高齢世帯を中心に根強くある。高齢者が集まるお寺や教会は、働き掛け次第でこうした意識を変えられる存在だ。
お寺や教会はいろいろな家庭と接し、事情を察するからこそ、客観的な視点を持つことができる。普段からさまざまな世代と交流している経験は、親ときょうだいの橋渡しに役立つだろう。子ども食堂や学習支援などの地域活動を通じ、SOSを出せない子ども・若者を見守ることもできる。
前掲書は、きょうだいたちに「選択肢」を提示できるようなかかわりが重要だと指摘している。選ぶ自由がなければ、自分の人生を生きていると実感しづらい。障害のある人のケアを、家族だからという理由できょうだいに押し付けることは、あってはならないのだ。
ヤングを卒業したヤングケアラーは、やがて親が障害のある子の面倒を見られなくなる「親なきあと」を心配するようになる。そうしたとき、選択肢の一つとしてお寺や教会が相談窓口になってくれれば、どれほど心強いか。宗教者一人一人が想像してほしい。