2024年9月24日
※文化時報2024年8月9日号の掲載記事です。
浄土宗願生寺(大河内大博住職、大阪市住吉区)は7月25~27日、「夏休み寺子屋さっとさんが」を開き、小学生31人が参加した。遊びを通じて防災意識を高めるプログラムをしたり、医療的ケア児=用語解説=の潮見邑果(ゆうか)さん(14)の食事風景を見学したりして世代を超えて交流した。(大橋学修)
願生寺では、毎月第3月曜に子ども食堂=用語解説=と、くつろぎの場として境内を開放する「寺子屋さっとさんが」を開いている。夏休みには学びと交流を兼ねた特別プログラムを行っており、今年で3回目を迎えた。大学生や中学生がボランティアで参加している。
初日の25日夕には、境内の井戸水を手押しポンプでくみ上げ、水風船を浮かべた簡易プールに注ぎ込むバケツリレーを実施。大人も子供も水浸しになりながら歓声を上げた。遊びを通じて防災意識を高める取り組みで、災害時に役立つ井戸が願生寺にあることを知り、手押しポンプの使い方に慣れてもらう狙いがあった。
願生寺は2021年9月に防災プロジェクトを開始。お寺を医療的ケア児の一次避難所として機能させようと、地域住民と共同で防災ワークショップを行い、交流イベントを開いている。
3日目の27日には、子どもたちと医療的ケア児の邑果さんが交流するプログラムを組み込んだ。毎年恒例となっており、邑果さんが抱えられてお寺に入ってくると、子どもたちは「久しぶりー」と声を上げて駆け寄った。
昼食では、母の純さん(51)がはさみで食材を刻みながら、子どもたちと同じカレーを邑果さんに食べさせる様子を見学。食後には、視線入力装置を使ったゲームで一緒に遊んだ。
医療的ケア児との交流を支える小西かおる・大阪大学大学院教授は「邑果さんは、子どもたちが集まってくると笑顔を見せた。ゲームでは、障害の有無に関係なく白熱する自然な空間になっていた」と振り返った。
過去2回の「夏休み寺子屋」は2日間だったが、今年は3日間行った。人間関係が濃くなると、中には不満をぶつけ合うこどもたちもいて、学生ボランティアが困惑する場面もあった。
大河内住職は「子どものころから、世代を超えた顔の見える関係性をつくろうとしている。もめ事が起きるのは、自然なコミュニティーができている証拠で、子どもたちが人間関係を学ぶ機会になる」と語る。
学生ボランティアについては来年以降、プログラムの企画段階から参加してもらう考え。大河内住職は、地域外からやってくるボランティアを関係人口=用語解説=と位置付けた上で「ボランティアは、地域にないものをもたらしてくれるし、活動自体が目的化することを防ぐカンフル剤にもなる」と語った。
【用語解説】医療的ケア児
人工呼吸器や胃ろうなどを使用し、痰(たん)の吸引や経管栄養などの医療的ケアが日常的に必要な児童。厚生労働省によると、2021年度時点で全国に約2万180人いると推計されている。社会全体で生活を支えることを目的に、国や自治体に支援の責務があると明記した医療的ケア児支援法が21年6月に成立、9月に施行された。
【用語解説】子ども食堂
子どもが一人で行ける無料または低額の食堂。困窮家庭やひとり親世帯を支援する活動として始まり、居場所づくりや学習支援、地域コミュニティーを形成する取り組みとしても注目される。認定NPO法人「全国こども食堂支援センター・むすびえ」の2023年の調査では、全国に少なくとも9132カ所あり、宗教施設も開設している。
【用語解説】関係人口
観光に訪れる「交流人口」と移住した「定住人口」の中間で、地域に関わる人々。人口減少社会で地域づくりの担い手となることが期待されており、主に農村部の地方自治体が関係人口を増やす施策を進めている。