2023年6月27日
高齢になっても元気で若々しい人は、仕事や趣味などの生きがいを持っている人が多いのではないでしょうか。逆に、生きがいを持つようになったことで要介護度や認知機能の改善が見られるというケースも少なくありません。
ある高齢者施設で生活する女性は要介護5。体をほとんど動かせず、自分の意思も示せない状態でした。
ある日、施設で音楽鑑賞レクリエーションが行われ、たまたま面会に来ていた家族がその様子を見学しました。女性はストレッチャーに乗った状態で参加しましたが、全く反応を示しませんでした。しかし、タンゴが流れたときに、ほんのわずかですが指先が動き、リズムを取っているようなしぐさをしたことに、家族は気付きました。
「そう言えば、本人はタンゴが大好きだった。タンゴを聴けば回復するかもしれない」
そう考えた家族は、施設から外出許可をもらい、地域のタンゴ教室に定期的に女性を連れていきました。もちろん踊ることはできません。しかし、幾度も通いタンゴを聴き続けるうちに、次第に意識がはっきりするようになり、簡単ですが会話ができるようにまでなったそうです。
こうして、女性はタンゴ教室に通うことが大きな楽しみになりました。
ところが、ある日家族がいつものように教室へ連れて行こうとすると「行きたくない」と拒みます。その理由は「化粧をしていないので、人前に出るのが恥ずかしい」とのことでした。
何歳になっても、寝たきりになっても「外出するときには身だしなみを整える」という気持ちを持ち続けること。そして、関わる人たちがその思いに応えること。それが大切なのではないでしょうか。