2022年9月1日
世界がぜんたい幸福にならないうちは
個人の幸福はあり得ない
――詩人、宮沢賢治(1896~1933)
自分一人だけが幸せになれるということは、絶対にない。
端的に言えば、そういう意味になるでしょう。競争社会を生き抜くため、「私が、私が」と他人を押しのけたり、必要以上に自己主張したりすることに慣れた人々には、耳の痛い言葉かもしれません。
『銀河鉄道の夜』などの児童文学で知られる賢治ですが、優れた農業技術者であり、思想家でもありました。「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」という言葉は、講義用の草稿として書かれた『農民芸術概論綱要』の一節です。
みんなの幸せが自分の幸せになる、という利他の精神にも通じると言えるかもしれませんが、実際の文章はこう続いています。
「自我の意識は個人から集団社会宇宙と次第に進化する
この方向は古い聖者の踏みまた教へた道ではないか」
自分という存在は、集団や社会、宇宙の一部ではなく、そのものであり、全体である。そうしたダイナミックな世界観・宇宙観が、賢治の底流にあります。
賢治は熱心な真宗門徒の家庭に生まれ育ち、のちに日蓮思想に傾倒しました。その世界観・宇宙観に仏教が与えた影響は、小さくないと思われます。
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