2023年4月6日 | 2023年4月7日更新
我、神仏を尊びて、神仏を頼らず
――剣術家、宮本武蔵(1584?~1645)
江戸初期のこと。京都・一乗寺下り松で、剣豪の宮本武蔵は吉岡一門の数十人と決闘に臨むことになりました。道中の八大神社に立ち寄って必勝を祈願しようとしましたが、祈ることなくその場を立ち去りました。小説や映画にもなった伝説です。
その時の心境を振り返った言葉が、「我、神仏を尊びて、神仏を頼らず」。神仏は崇拝するが、神頼みではいけない。頼ろうとするのは自分自身の弱さだ―というわけです。
「苦しい時の神頼み」ということわざには、疎遠な人や義理を欠いている人に、苦しい時だけ助けを求めることを戒めるという意味もあります。そもそも神社仏閣への参拝は、願い事ではなく感謝を伝える場だともいわれます。自分の都合だけを考えていては、神仏はもちろん、誰からもそっぽを向かれてしまうという結果になるでしょう。
「人事を尽くして天命を待つ」ということわざもありますね。ひょっとすると、武蔵はそうした境地に達していたのかもしれません。
ちなみに決闘は一乗寺下り松ではなく、北野七本松で行われたとの説もあります。