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答えは問いの不幸である

2022年9月28日

答えは問いの不幸である
――哲学者、モーリス・ブランショ(1907~2003)

 「いい質問ですねぇ」がユーキャン新語・流行語大賞トップテンに選ばれたのは、2010年のことです。ジャーナリストの池上彰さんの言葉で、自身がMCを務めるニュース解説の番組の中で繰り返し使ったことから話題になりました。

 池上さんは、受賞コメントの中で「いい質問」の例を二つ挙げています。

 一つが、横道にずれた話を元に戻せるような質問。もう一つが、本質を突いた質問。「私自身が勉強になるからです」とのことでした。

 いずれの場合も、質問を受ける側にとっての「いい質問」という意味ですが、では質問をする側にとっての「いい質問」とは何でしょうか。

 一般的には「いい答え」を引き出せるのが「いい質問」といえるのかもしれません。ただ、冒頭の「答えは問いの不幸である」という言葉に照らすと、また違った考え方ができます。

 世の中の課題に対して一つしか解決策がない、ということなど、ほとんどありませんよね。例えば「心のケア」に関する理論や技法はたくさん存在しますが、万人に通用する正解はない。相手に合った方法を探し、選び取っているはずです。

 「いい答え」を得てしまえば、それに満足して考えようとする意欲が失われます。新入職員の教育もしかり。手取り足取り教えることは、なぜそうするのかと考えさせる機会を奪うことにもつながります。

 質問をする側にとっての「いい質問」とは何か。そんな問いだけを立て、答えを示さないようにしておきます。答えは問いの不幸ですから。

 

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