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「文化時報」コラム

⑬壊れてフタが開いた

2022年11月22日

※文化時報2022年2月25日号の掲載記事です。

 いつもは、自分のスピリチュアルの小さな箱のフタを、割合うまく管理できている方だと思っています。でも、年に数回ですが、そのフタが閉まらなくなってしまうときがあるのです。

傾聴ーいのちの叫び 

 常日頃、命に等しく「死」が与えられていることについて、「頭」ではなんとか承服しているつもりでいます。でも、時に、その「死」を迎える作業に大きな苦しみが付加され、決して穏やかではないことを目の当たりにすると、フタの蝶番(ちょうつがい)が壊れてしまうのでしょうか。

 フタが開きっ放しになると、箱の底に元々沈殿していたむなしさ、寂しさ、怒り、悲しみ、哀れみ、疑問、焦り、諦め…あらゆる形をした「澱(おり)」が、もわあ、もわあとかき回されて、ダラダラ、ドロドロと、際限なく漏れ出してきてしまうのです。そうなれば、いつも決まって体も反応してしまい、夢の中にいざなってくれる羊さんと不仲になる。この一連の型を、年に数回繰り返す感じです。

 以前は、蝶番がぶっ壊れる兆しを察知すると慌てふためいて、なんとか回避しよう、一刻も早く抜け出そうともがいたものでした。原因を追究して未然に防ぐ対策を立てようとしたり、人に相談しまくったり、はたまた薬に頼ろうとしたり。自分のスピリチュアルケアギバーとしての力量をなんとか鍛え上げようとしたこともありました。

 でも、どんなことをしても、うまくはいかないってこと、今ではよく分かりました。(笑)どうしたって、フタが開いちゃうときは開いちゃうのです。

 ですから今は、ただ「居(い)る」ことにしました。先に逝った方々の言葉やまなざし、丸めた背中や息遣いが浮かんでは消え、浮かんでは消えするままに、ただ居ます。だいたい2、3日もすれば、だんだんと沈殿してきて、小さな箱の中はまた澄んでくるのですから。 

 今回も、今夜あたり羊さんが機嫌を直してくれるでしょう。彼女が逝ってちょうど7日。天の川の辺りをゆっくり歩いている頃かな。

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