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「文化時報」コラム

〈56〉お参り先の家庭問題

2023年12月4日

※文化時報2023年5月16日号の掲載記事です。

 先日、あるお参り先でのこと。50代のお母さんと20代の息子さんが2人で暮らしている。息子さんは療育手帳を持っている。「今日はお坊さんが来るから家にいなさい」と言われていたのに、出かけたまま帰ってこないらしい。

 「20代の男の子ならそんなものでしょう」と笑って答えたが、お母さんは息子さんの知的障害を気にしている。警察から電話がかかってくることもあるらしい。だから息子さんが出かけると帰ってくるまで心配でドキドキするそうだ。

 「離れて暮らしてみたらどうですか?」と提案してみた。お母さんはとんでもないと言わんばかりに首を横に振った。「あの子は一人暮らしなんかできません」と。30年後もこのまま2人暮らしなら8050問題=用語解説=の事例になる。介護が必要になってきた親に、障害のある子の2人暮らし―。

 内閣府が行った2019年の調査によると、80代の親と暮らす自立できない50代の子は60万人以上いるという。

 8050問題に関連する事件も全国各地で起こっている。多くの場合、家庭の問題を外部に知られるのは恥だと考え、家庭内で問題が深刻化していき、最悪の結果につながっていったという見方が強い。

 冒頭のお参り先のお母さんも「職場や近所の人に息子のことを知られるのは恥ずかしい」と言っていた。「親の育て方が悪い」と笑われるだけだと思っている。「あんな優しい息子さんなのに育て方が悪いなんて、誰も思わないですよ。お坊さんが会いたがっていたと伝えておいてくださいね」と言い残して家を出た。

 僧侶は、医療や福祉関係者とは違った立ち位置から家庭の問題に触れやすい。他人事と見過ごしていいのだろうか?

 本人から「助けて」と言わない限り行政は何もできない。そうやって放置されてきた人たちが8050問題の当事者とされている。親が50代、子が20代の時に自立を考えておかないといけないだろう。おせっかいが過ぎるかもしれないが、その手助けをする僧侶でいようと思う。

【用語解説】8050問題(はちまるごーまるもんだい)

 ひきこもりの子どもと、同居して生活を支える親が高齢化し、孤立や困窮などに至る社会問題。かつては若者の問題とされていたひきこもりが長期化し、80代の親が50代の子を養っている状態に由来する。

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