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「文化時報」コラム

③ケアの道を探究する

2022年9月9日

※文化時報2021年9月16日号の掲載記事です。

 「スピリチュアルケア」は「する」ものではなく、後付けで「成る」ものだと思っています。

傾聴ーいのちの叫び

 スピリチュアルケアが成るためには、三つの力が必要です。

 一つ目は、相談者の方が持つ「相手の力」。二つ目は、その場が持つ「場の力」。そして最後が「自分の力」です。この三つの中で、制御できるのは「自分の力」だけです。つまり、スピリチュアルケアが成立するという幸運の確率を少しでも上げるためには、究極まで自己を鍛え、自らの次元を上げるしか方法がありません。

 もちろん、基本的なコミュニケーションのテクニックや、心理学や哲学などの知識が必要でないというわけではありません。でも、それらは単なる養分にすぎないのです。養分を吸収して、どこまで自分を深められるか。常にそれを問われているのが、スピリチュアルケアを行う者ではないでしょうか。

 私は、もう間もなく逝こうとしている方に、理論や常識やテクニックといったような、条件が変われば一緒に変わってしまうものでは相対することができませんでした。そんなものを振りかざしたところで、表面的な痛みにすら触らせてもらえなかったのです。死にゆく人が気付いてしまった魂の痛み(スピリチュアルペイン)に触れさせていただくには、もっと深く、そして、決して揺るがない何かがないといけません。

 それが何なのか、探し続けているところです。たぶん、今回の人生ではその答えを見つけられないでしょう。それでも一生涯をかけて追い求めていくしかありません。まさに「スピリチュアルケア道」です。

 道を探究する私にとって、看護師という科学に立脚する視点と、僧侶という死後の世界までも包括する視点を持てたことは、幸いでした。スピリチュアルケアのためにではありません。自分が揺るがず「在る」ためにです。だから、スピリチュアルケアの現場で説法などすることはないのです。

 

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