2024年1月18日 | 2024年10月2日更新
※文化時報2023年7月25日号の掲載記事です。
ある会社の懇親会に呼んでいただいた。若い社員さんが幹事役となり、ビールサーバーありのバーベキューだった。
最近の若い人は反応が薄いとよく聞く。消極的な性格の人が多いという意味のようだ。しかし、その懇親会は若いパワーにあふれていた。
積極的に名刺交換に回ってくる若い事業主もいた。乾杯を何度も繰り返すテーブルもあった。昭和のおじさんが泣いて喜びそうな盛り上がりだった。
筆者のテーブルには、病院勤務の人がいた。筆者が速いペースで生ビールをおかわりしていくので、つられてよく飲んでいた。ほどよく酔いが回ってくると「病院あるある」がたくさん出てきた。かなりの激務なようだ。
このコラムで何度か紹介しているが、懇親会は相手の本音が飛び出すので面白い。本音で語り合えば仲良くなることも多い。それが仕事にも影響していく。令和の時代に若い幹事役がこんな場を作ってくれたことがうれしかった。
後日、幹事役の若い2人が訪ねてきてくれた。仕事上の悩みを聞いてほしかったようだ。懇親会のパワーはどこへいったのかと不思議なくらいに落ち込んでいた。楽しい時間を共有させてもらったお礼にと、少しばかりのアドバイスをした。知り合いに電話して許可を得て、その人の名刺をコピーして渡した。みるみる表情が明るくなっていった。まるで、しおれかけていた植木に水をやった時のようだった。
「会社に戻って上司に報告してきたら」と促すと「帰社しなくても大丈夫です」とスマートフォンをいじり出した。そして、ビデオ通話で上司と会議を始めた。スマホが1台あればオフィスなんぞ必要ないのかもしれない。
「今日の仕事は終わりました」と満面の笑みの2人。「じゃあ飲みにいくか」と居酒屋へ連れていった。
昔と今。変わったことと変わらぬことが混在していた。会社に戻って上司にガミガミ言われなくて済んでいる分、上司との「こころの距離」は遠くなっているように思えた。飲みニケーションは時代遅れかもしれない。でも、上司ではない坊主が代わりをしているのも滑稽に感じた。