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「文化時報」コラム

〈83〉あふれる遺体

2024年9月12日 | 2024年10月2日更新

※文化時報2024年6月25日号の掲載記事です。

 NHKクローズアップ現代で「知らない間に火葬された〝あふれる遺体〟相次ぐトラブルの実態」が今月10日に放送された。実際に身寄りがない人の火葬手続きをしている筆者からすれば、いささかミスリードなタイトルだと思った。

 高齢者に限らず一人暮らしの人が増えている。けがや病気で救急搬送されたとき、家族や知人の連絡先を携帯しているだろうか?

 スマートフォンをロックしている人も多いだろう。仮にロックしていなくとも、病院関係者が患者のスマートフォンを無断で見るわけにはいかない。連絡が取れないまま、万が一息を引き取るようなことになればどうなるのだろうか?

 おそらく病院は行政に助けを求めるだろう。そして、行政は民間の葬儀社へ遺体の預かりを依頼するだろう。所定の方法で家族を捜すが判明しなかった場合、公金で火葬されることになる。その後、家族が名乗り出てくることがごくまれにあるのだろう。

 こうしたまれなケースは別として、遺体の引き取り手がないという問題を、都市部を中心に自治体が抱えている。特に高齢者で身寄りがない人には、葬儀社と生前契約を勧める自治体もあるそうだ。

 先日、筆者の元へもある病院から依頼があった。全く身寄りがない人が救急搬送されてきた。療養型の病院へ転院する際に保証人がいないと困るので呼ばれたのだ。病院の相談員立ち会いで本人から身元保証と「死後事務委任」の依頼を受けた。そして、数日後亡くなった。

 自治体が勧める葬儀社との生前契約は、あくまで火葬だけの話であり、自宅の片付けや入院費の支払いまでは及んでいない。それをするためには死後事務委任契約をしておくことが必須である。仮に後見人などがいたとしても、見かねてしてあげているだけで、本来は後見人などの職務ではない。

 死後事務委任契約は現在のところ、NPO法人などの民間団体や司法書士などの士業が請け負っている。お寺でも契約の窓口を設けるのがいいと思う。それに役立つごく基本的な知識を学べる講座を、文化時報が開講している。

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