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インタビュー

橋渡しインタビュー

福祉×デザイン×地域創生に挑む 江藤惠美さん

2024年2月28日

 障害のある人の親やきょうだいなど親族の立場にある専門家たちでつくる一般社団法人「親なきあと」相談室関西ネットワーク(藤原由親・藤井奈緒代表理事)は1月22日、大阪市立青少年センター(大阪市東淀川区)で第36回セミナーをオンライン併用で開いた。デザイナーで就労継続支援B型事業所=用語解説=を運営する江藤惠美(めぐみ)さんが登壇。「福祉×デザイン×地域創生に挑む~ダウン症の支援と娘と共に」と題し、約20人を前に講演した。

(写真①アイキャッチ兼用
 キャプ:講演する江藤惠美さん。デザイナーであり、福祉事業所の経営者でもある)
講演する江藤惠美さん。デザイナーであり、福祉事業所の経営者でもある

 江藤さんはダウン症のある12歳の娘の母親。和紙を使った建築・インテリアのアート作品を世に出す一方、娘の成長と共に福祉現場に興味を持つようになった。

 福祉事業での起業を見据え、2021年に菓子工房を設立。クラフトビールの醸造の際にできる搾りかすを使って、スティック状の固いパン「グリッシーニ」などを作り、軌道に乗せた。翌22年に就労継続支援B型事業所「ヤドリギワークス」(神戸市東灘区)を立ち上げ、23年には兵庫県芦屋市と連携し市役所内でカフェを始めるなど、さまざまな福祉事業に取り組んでいる。

 セミナーで江藤さんは「娘の成長の少し先を見越して、環境を整えたいと活動してきた」と語った。生後1カ月でダウン症と分かったとき、しばらくは泣き明かしたが、「この子の一番の応援者は産んだ自分だ」と、前を向いて生きてきたと明かした。

 ダウン症関係の団体とつながり、ファッションショーなどのイベントを手掛けるようになったことで、一過性の行事だけでなく、継続して福祉に関われないかと起業を決意。デザイナーとしての仕事があるため、当初は副業として始めたが、今では逆転していると語った。

 今年4月には「ダウン症サポートセンターin神戸」を開設する。ダウン症のある子の生活や就労、健康、運動、ファッションなどを楽しく学ぶことを通じて、交流の場やネットワークをつくるという。

 背景にあるのが、特別支援学校を卒業した後の支援体制。在学中は教員がいろいろと相談に乗ってくれるが、卒業すると途端に頼れなくなる。「担任の先生のような存在が、地域にも必要ではないか」との問題意識を持ち、ダウン症の子への生涯にわたるサポートを目指す。

(写真②
 キャプ:会場では約20人が江藤さんの話に耳を傾けた)
会場では約20人が江藤さんの話に耳を傾けた

 今後はデザイナーとして取り組んできた和紙の仕事を福祉現場にも取り入れたいと考えている。「『ダウン症の子のためなら協力する』というさまざまな方々の思いとともに、未来を切り開いてきた」と感謝の言葉を口にし、「思ったことは実行することが大事。娘のために何ができるかを考えながら、一生懸命生きていきたい」と誓った。

【用語解説】就労継続支援B型事業所

 一般企業で働くことが難しい障害者が、軽作業などを通じた就労の機会や訓練を受けられる福祉事業所。障害者総合支援法に基づいている。工賃が支払われるが、雇用契約を結ばないため、最低賃金は適用されない。

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