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インタビュー

橋渡しインタビュー

放浪やめて義肢職人に ゆめ工房・益川恒平さん㊦

2022年9月24日

 小児専門の義肢装具をオーダーメイドで作る株式会社ゆめ工房(京都市上京区)の社長、益川恒平さん(44)は、会社が立地する京都市上京区の北野商店街を、福祉に特化した街にしようと行動を開始した。福祉に関係する事業所を商店街に数多く誘致し、社会的弱者を支えつつ、地域づくりと商店街の活性化を一挙に実現したいと構想を描く。(ゆめ工房・益川恒平さん㊤からつづく)

靴底に入れる補装具を説明する益川さん
靴底に入れる補装具を説明する益川さん

 株式会社ゆめ工房は2018年6月、小児用補装具に特化する日本でも数少ない企業として設立した。顧客の大部分がダウン症の子どもたちで、オーダーメイドの義肢装具のほか、車いすや頭部保護帽などを扱う。

 北野商店街に会社を置いたのは、障害のある人たちを知ってもらうことが、社会的孤立や排除を防ぐと考えたからだ。来店する障害のある子どもが買い物客の目に留まり、ショーウインドーからは、どのような物を使っているのか見てもらえる。「人間は、意識がないと視覚に入らない。だからこそ、北野商店街に会社を置くことに意味がある」という。

 ただ、障害のある子どもの存在を知ってもらおうにも、商店街が寂れてしまっては意味がない。北野商店街はかつて、道路の中央を市電が行き交い、多くの買い物客でにぎわった。だが今は、苦境に立たされる全国の商店街と同じく、空き店舗が目立つ。

シャッターが目立つ北野商店街
シャッターが目立つ北野商店街

 そこで思いついたのが、福祉サービスをワンストップで提供できる商店街として再生し、活性化を図ること。空き店舗や周辺地域に、福祉関連の事業所を誘致する。社会的弱者の雇用創出にもつなげる。「必要とされるものを提供することが、商店街の活性化につながる」と考えた。

 困ったことがあっても、「北野商店街に行けばなんとかなる」と思ってもらえる街をつくる。そんな考え方を、商店街の店主たちに理解してもらおうと、北野商店街振興組合の理事会入りも果たし、他の理事たちの説得に取り掛かっている。

分かち合いの場も開設

 ゆめ工房では、障害のある子どもを持つ保護者や、支援を志す人たちが集まり、思いを分かち合う「ゆめカフェ」も開いている。補装具を製造販売する会社が〝場づくり〟を行う例は、全国でも珍しいという。

月1回開く分かち合いの場「ゆめカフェ」
月1回開く分かち合いの場「ゆめカフェ」

 開設のきっかけは、障害のある子を持つ親から「思いを話せる場所が欲しい」という声を聞いたからだ。障害のある子を持つ親は、将来に不安を持つ。そして、「他の子どもと違う」という思いが孤立感につながっている。

 益川さんは、安心して過ごせる地域づくりを進める第一歩として「ゆめカフェ」を立ち上げた。「親は、子どものより良い生活と成長を願う。それに応えるのが僕らの仕事。僕らは道具を提供することしかできないが、家族にとことん寄り添うことで、できることを増やしていきたい」と話す。

 

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