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インタビュー

橋渡しインタビュー

あなたが来ると楽しいことがある 大谷こずえさん㊤

2022年9月29日

 筆も水も使わない。チョークのような顔料を粉末にし、コットンを使ってくるくると模様を描いていく。子どもから高齢者まで誰でも気軽に楽しめて、心をリラックスさせる優しい色合いの作品が、たちまち出来上がる。絵心がなくても絵になっていくという。

 そんなパステルシャインアートに、大谷さんは魅了された。元々はパソコンのインストラクターをしていたというが、関連する資格を次々と取得。自宅にアトリエを構え、講師になった。

 そして、母のトミ子さん(91)がアルツハイマー型認知症になった。

コ大谷こずえ(おおたに・こずえ) 埼玉県所沢市在住。結婚・子育てを経て、家具などの木製品に絵の具を塗る「トールペイント」の教室を自宅で開催。2011(平成23)年に「パステルシャインアート」と出合い、魅了されて転向した。教室のほか、介護施設でボランティアも行っている。64歳。
大谷こずえ(おおたに・こずえ) 埼玉県所沢市在住。結婚・子育てを経て、家具などの木製品に絵の具を塗る「トールペイント」の教室を自宅で開催。2011(平成23)年に「パステルシャインアート」と出合い、魅了されて転向した。教室のほか、介護施設でボランティアも行っている。64歳。

「私が認知症を治す!」

 独居の母を世話するため、実家に通う生活が始まった。単なる家事の手伝いや見守りだけではない。「私が認知症を治す!」。そうした意気込みで、一緒にパステルシャインアートをするよう勧めた。

 トミ子さんは書道をたしなんでいたが、実際にパステルシャインアートを体験してみて、絵にも興味があることが分かった。

 「私よりもずっと創造性のある作品を描いて驚きました。イメージを膨らませるのが上手で、私にとっては母のパステルシャインアートが発想の源になりました」。週1、2回デイサービスが休みの日に実家へ行き、そのたびにトミ子さんはこう言って喜んだ。

 「あなたが来ると楽しいことがある」

 作品の制作だけでなく、美術鑑賞に出かけるなど、親子で楽しみを共有した。

パステルシャインアートの作品
パステルシャインアートの作品

 トミ子さんの作品が増えるにつれ、大谷さんはあることを思い付く。通っているデイサービスで、パステルシャインアートの教室をボランティアで開くことだ。

 「デイサービスも歓迎してくれました。ポイントは、母を私のアシスタントにつけたこと。母が他の利用者さんのそばで、お世話をする場面が見られました」。事前に自宅で練習した成果があったという。

 それ以降、新型コロナウイルスの感染が拡大してからも、自宅と介護施設をリモートでつなぎ、教室を開いている。

 トミ子さんの活躍は、たしかに大谷さんの気持ちを和ませた。ただ、必ずしも介護は順風満帆とはいかなかった。

 

 

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