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お寺と福祉の情報局

福祉職は「利他行」なのか

2023年4月21日

 皆さんは、仏教にある「自利」「利他」という考え方を知っていますか。簡単に言えば「自利」は自分の利益のために努めることで、「利他」は、自らを犠牲にしてでも他人を優先し、施しを与えることです。では、仏教において、自利と利他はどちらが重要であると説かれているでしょうか。

相手を思いやる(イメージ画像)
相手を思いやる(イメージ画像)

 実は、どちらも重要である、とされています。

 ただ、日本に現在広まっている大乗仏教と、仏教が誕生したインドの原始仏教とでは、どちらに重心を置くかが異なります。ここでは、以前紹介した仏教の豆知識「月にいるウサギの正体は…」で、ウサギが空腹の旅人に自分の身をささげた行為である捨身(しゃしん)を例に考えてみましょう。

 まず、大乗仏教の観点からいうと、捨身は尊い利他の行為だと見なされます。困っている他人の為に自分を犠牲にすることは称賛されるべきことだという考えで、利他が最終目的だといえます。

 また、大乗仏教で捨身は布施と捉えられます。布施は、与える人・与えられる人・与えるものの全てが清浄である三輪清浄(さんりんしょうじょう)が理想とされます。すなわち、見返りを求めたり、やってもらって当然と思ったり、盗んだものを与えたりすれば、それは汚れた布施になってしまうと考えるのです。

 しかし、原始仏教では、結局ウサギは、徳を積んで自分が人間に生まれるため、自利のために捨身をしたという捉え方をします。「情けは人のためならず」ということわざのように、他人のためにやったことは、結局は自分のためになるという考え方のため、どちらかというと自利が重視されています。

 福祉職は、他の職種と比べて、他人のために施す利他行のような仕事を多くこなしているといえます。その際に、相手のために尽くす心を持つことも素敵ですが、むしろ自分のためになる、という考え方をするのも、少し気が楽になって良いのではないでしょうか。

 日本では大乗仏教が主流ですが、皆さんはどちらの考え方が好みでしょうか。普段のお仕事や生活の中にも、仏教の考え方を取り入れてみると、何か変化が起きるかもしれません。

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