2023年11月29日
障害のある人の親やきょうだいなど親族の立場にある専門家たちでつくる一般社団法人「親なきあと」相談室関西ネットワーク(藤原由親・藤井奈緒代表理事)は10月26日、大阪市立青少年センター(大阪市東淀川区)で第34回セミナーをオンライン併用で開いた。会場では約20人が参加し、訪問介護のいろいろな利用の仕方や、障害のある人を対象にした記念写真事業についての知識を得た。
訪問看護については、一般社団法人あくしゅ・訪問看護ステーションエターナル代表の巴眞弓さん(大阪府河内長野市)が解説した。巴さんは、知的障害と自閉症、注意欠陥多動性障害(ADHD)のある双子の親でもある。
訪問看護について、巴さんは「赤ちゃんからお年寄りまで全ての方が対象」と指摘。認知症の看護や終末期医療だけでなく、障害のある子が自立して生活できるよう援助する「療育」やきょうだいの支援、不登校の子の学校への送り出しをすることもあるとして、「医療的な行為がなくても利用できる」と語った。
具体的には、イラスト入りのカードや写真付きのスケジュール表を使った事例を紹介。自閉症のある子が主体的に学習できるよう、視覚的に分かりやすい環境をつくる「構造化」を手伝うのも仕事だと述べた。
また、「この先どうなっていくのか」「支援は継続されるのか」といった家族の不安を和らげるため、傾聴と共感を大切にしていると強調。「どの家族も一生懸命育てている。子どもの成長・発達を一緒に見守り、『できること』に着目して、少しずつ成長するのを応援してほしい」と語り掛けた。
記念写真事業は、「親なきあと」相談室関西ネットワークで相談員を務める「SMILE MOMO」代表の森田智子さん(同市)が「heart freeフォトグラフ」と題して、全国展開を計画している。
重度心身障害のある息子の親でもある森田さんは、障害のある人や在宅療養の人の自宅などを訪問して髪を切る「訪問美容」を行ってきた。カットした人は約5000人に上り、合わせて記念写真を撮る利用者もいたことから、事業化を考えたという。
森田さんは、エプロンのように脱着しやすい着物を使って成人式の写真を撮った障害のある女性や、提携するスタジオで家族写真を撮影した例などを、実際の写真とともに紹介。「人生の節目や記念日に記念撮影することは、人として当たり前。障害があるからといって、諦めてほしくない」と訴えた。
来春には大阪市中央区に、障害のある人も使いやすいフォトスタジオをオープンさせる予定で、クラウドファンディングを準備中。当事者・家族やカメラマン、医療関係者など、関わる人たち全員が安心して撮影に臨めるよう、コーディネーターを育成していく考えだという。