2022年9月10日
外部の人の目があるところでは普段よりも立ち居振る舞いや言葉遣いに注意するのは、老若男女問わず誰でもそうでしょう。「普段はよろよろと動く母親が、要介護認定調査のときだけはキビキビと行動したため、要介護認定が下りなかった」という話もあるようです。
関西に学童保育併設のデイサービスがあります。法律・指定の関係から事業所・運営者とも全く別の扱いになっていますが、両者は低いウレタンブロックで仕切られているだけで、実質的には一体運営。学童保育の小学生とデイの高齢者は自然に交流しています。
「なあ、おじいちゃん。宿題教えてーな」。こんな会話が日常的に交わされているそうです。
しかし、困ったのは高齢者です。小学校1・2年生の国語や算数ならともかく、5・6年生の勉強などとなると相当に難しく、スラスラと教えられません。すると、さすが関西の子ども。すかさず「なんや、おじいちゃん、分からんのか。ボケたんちゃうんか~」と強烈なツッコミが飛んできます。
そうした中で、デイを利用する高齢者に変化が生じました。
学童の小学生がやってくるのはデイの最後の1時間程度。普通なら疲れてぐったりとしている利用者が多い時間帯ですが、このデイではその時間になると「子どもたちの前でみっともない姿を見せるわけにはいかない」と、逆に高齢者の背筋が伸びるそうです。
デイに通うときの服装も以前よりおしゃれになりました。さらに「子どもに勉強を教えられないのは恥ずかしい」と、算数の問題集を買って自宅で勉強する高齢者まで出てきたそうです。
「私たちが『脳トレをしましょう』などと促すよりも、子どもたちの一言の方が、100倍効果がありました」と、デイの管理者は語りました。