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映える地域へ住職奔走 シャッターアートで活性化

2024年12月21日

※文化時報2024年10月15日号の掲載記事です。

 浄土宗願生寺(大阪市住吉区)の大河内大博住職が共同代表を務める合同会社さっとさんがLab(同区)などが、同寺の最寄り駅に当たる南海高野線沢ノ町駅周辺で「ごちゃまぜアートプロジェクト」を始動させた。大阪市立墨江丘中学校の2年生が、商店街のシャッターに作品を描き〝映えスポット〟として再生させる。将来的には非代替性トークン(NFT)=用語解説=を導入し、インターネット上の仮想空間「バーチャル沢ノ町駅前」で作品を展示したい考えだ。(大橋学修)

南海電鉄も協力へ

 9月27日にプロジェクトの第1弾となる作品のお披露目式が開かれた。大河内住職らが駅前に開設した訪問看護ステーションさっとさんが願生寺(同区)のシャッター(幅約3メートル、高さ約2.5メートル)に、墨江丘中の2年生らが作品を描いた。

 「幸せは必ず来る」という花言葉を持つカキツバタと、ハート形の軌跡を残したリボンで、幸せの連鎖を表現。生徒全員の手形を重ねて虹に仕立てた。

(画像シャッターアート・アイキャッチ兼用:地域活性化に向けたシャッターアートを披露する墨江丘中学校の生徒と大河内住職(右))
地域活性化に向けたシャッターアートを披露する墨江丘中学校の生徒と大河内住職(右)

 沢之町駅前商店会前副会長の北橋弘子さんは「商店街には空き店舗が多いが、明るい雰囲気になると気分も上がる。活性化につながるはず」と期待を寄せた。

 12月までに2軒の店舗で新たな作品が描かれる予定で、沢ノ町駅舎もキャンバスとする方向で調整が進められる。南海電鉄の関係者は「地域の方に喜んでいただき、アート目的で多くの方にお越しいただけるのであれば、前向きに考えたい」と話した。

共生から観光名所に

 大河内住職は、沢ノ町駅前の地域一帯を願生寺の境内地と位置付け、さまざまな取り組みを進めている。訪問看護ステーションさっとさんが願生寺は駅の正面に立地。お寺の行事として始めた子ども食堂は、近くの喫茶店を開催場所としている。お寺を中心とした街づくりによって、地域共生社会=用語解説=の実現を目指している。

 大河内住職が気にかけているのは、駅周辺で起きる自殺や踏切事故。見た目に街並みを明るくすれば、死にたいといった気持ちやイライラを落ち着かせられるのではないか―と、アートによる自殺・事故防止に着目した。

(画像駅前:大河内住職が「境内地」と位置付ける南海電鉄沢ノ町駅前)
大河内住職が「境内地」と位置付ける南海電鉄沢ノ町駅前

 2022年に有識者を集めて協議をスタート。願生寺の子ども食堂にボランティアとして参加している墨江丘中の生徒たちが、授業の一環で「壁にアート作品を描く」という地域活性化のアイデアを出し、尾松大義(ひろよし)教諭を通じて大河内住職に相談があったことから、実現にこぎ着けたという。

 大河内住職らは今後、駅前全体がアート空間になるよう商店会や南海電鉄に協力を求めていき、仮想現実(VR)を用いたトリックアートを導入するなどして、一帯が観光名所になるよう仕掛けていく。

 さらには仮想空間「バーチャル沢ノ町駅前」をつくる。地区外の人がバーチャル住民として登録できるようにし、非代替性トークンを使ったアートによる収益事業を行って、同様の取り組みを進める別の地区の支援に充てる構想だ。大河内住職は「ブランド化を図ることで地域を活性化させたい」と話している。

【用語解説】非代替性トークン(NFT)

 NFTはNon-Fungible Token(ノンファンジブル・トークン)の頭文字から取った略称。仮想通貨の基盤技術であるブロックチェーン(分散型台帳)を用いて、コンピューター同士が監視し改竄(かいざん)や複製をしづらくしたデジタルデータを指す。複製が容易なデジタルアートや映像などに対する証明書のような機能を果たす。

【用語解説】地域共生社会

 厚生労働省が掲げるビジョン。地域住民らが世代や分野を超えてつながり、一人一人の暮らしと生きがいを共につくる社会を目指す。公的支援の「縦割り」から「丸ごと」への転換なども図る。2016(平成28)年6月に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」 に盛り込まれた。

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