2025年6月7日
※文化時報2025年3月4日号の掲載記事です。
一般財団法人お寺と教会の親なきあと相談室(小野木康雄代表理事、京都市下京区)は2月18~19日、大阪市天王寺区の浄土宗銀山寺(末髙隆玄住職)で特別講演会と「オールナイト語らいカフェ」を開いた。「普段の分かち合いだけでは時間が足りない」という参加者の声を受けた初の試み。障害者支援に詳しい2人の講師を千葉県から招き、障害のある子の親や支援者ら約20人が心行くまで語り合った。
同財団は、親が面倒を見られなくなった後に障害のある子やひきこもりの当事者がどう生きていくかという「親なきあと」の問題に、宗教者と共に対処している。全国18カ所の寺院などに支部があり、その多くが参加者同士で悩みや不安を語り合い、聴き合う「親あるあいだの語らいカフェ」を開いている。
今回は、支部を設けている銀山寺の協力を得て、初めて夜間に語らいカフェを開催。宿泊可能な会館で、同財団が用意したり各自が持ち寄ったりした食事や飲み物を口にしながら、参加者らが時間を気にせずよもやま話に花を咲かせた。
オールナイト語らいカフェに先立つ特別講演会では、習志野市生活相談支援センター「らいふあっぷ習志野」の相談支援員、及川恵さんが、千葉県内の日蓮宗寺院と共に就労準備支援事業=用語解説=を行っている事例を紹介。僧侶の話を聞いた利用者が「お坊さんも悩んで、お寺で働いて和尚になっていくのだと思うと、身近に感じた」との感想を漏らしたというエピソードを明かした。
続いて登壇した株式会社ふくしねっと工房(船橋市)代表取締役の友野剛行さんは、全国から受け入れた強度行動障害などのある人たちの暮らしぶりを紹介。重度の知的障害があるといわれる人には、障害のない人にはない能力があると指摘し、「彼らのすごさを発見しようとして関わると、楽しみが持てる」と話した。
また障害のある子の親も、子に対して「支配する・支配される」という一方的な関係を強いてはならないと強調。「子のために一生懸命生きることだけが全てではない。親は親としてでなく、一人の人間として自分の人生を生きてほしい」と呼び掛けた。
【用語解説】就労準備支援事業
生活困窮者自立支援法に基づき、心身の不調などで就労が難しい人を支える事業。生活習慣の改善やコミュニケーション能力の向上、就労体験などを通じ、働くための準備を整える。