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お寺で「まちの助産師」産前産後の居場所に

2022年12月18日

※文化時報2022年10月14日号の掲載記事です。

 浄土宗願生寺(大河内大博住職、大阪市住吉区)で3日、産前産後の女性を支援する「まちの助産師」が開設された。天子(てんし)助産院(同市住之江区)代表の笹倉千香恵さん(41)ら助産師の有志が、願生寺の協力を得て立ち上げた。毎月第1月曜の午前中に開き、出産や育児にまつわるさまざまな悩み相談に乗る。(大橋学修)

願生寺の客殿で実子をあやす藤井さんと語り合う中野さん、笹倉さん(右から)
願生寺の客殿で実子をあやす藤井さんと語り合う中野さん、笹倉さん(右から)

 産前から出産・育児に至る間、母親は多くの悩みを抱えるが、継続的に見守りながらそれぞれの女性に適したアドバイスをできる人は少ない。笹倉さんらは、地域の助産師ならその役割が担える上、ふらりと立ち寄れて地域の中心にあるお寺なら、若い母親たちが安心できる居場所にふさわしいと考えた。

 「まちの助産師」では、産前から母親と交流しながら、出産や育児の不安を和らげる。家庭内の悩みなど、さまざまな話が出ることを想定。時間があれば、願生寺と共に活動するボランティア団体「こども食堂にじっこ」が提供する昼食の弁当を食べながら歓談する。

 助産師の藤井悦子さん(45)は「1回会うだけでは、その人の変化を捉えることは難しい。少なくとも数カ月が必要」と語った。

 初回は広報不足もあり参加者は訪れなかったが、発起人の1人で出産ケア政策会議理事の中野裕子さん(52)は「定期的に開いて、いつでも参加できる場とすることが大切」と話した。

 願生寺では、子ども食堂と寺子屋を連携した取り組みや、介護者の分かち合いの場など、幅広い世代との連携を図っている。大河内住職は「各世代が交流しながら年を重ね、地域で新たな役割を担っていくようにできれば」と期待を寄せた。

妊婦の死因、1位は自死

 「まちの助産師」を開く背景には、妊産婦の孤立がある。厚生労働省の補助事業として国立成育医療研究センターが2015~16年に行った研究では、妊産婦の死因は自死が176人中102人と最多で、2位の出血死(23人)以下に比べると突出している。

「まちの助産師」を開く願生寺
「まちの助産師」を開く願生寺

 発起人の1人、中野裕子さんは、産前産後の数年間を見守り、悩みを聞く存在がいないことが原因だと考えている。

 ただ、多くの助産師は医療機関の産科の看護師として従事しているため、一人一人の妊婦に向き合いづらく、葛藤を抱えている。本来だと出産後も育児の悩みに応じる立場だが、医療機関だと関係が切れてしまうことが多く、医療機関での出産自体も9割を超えるなど、長期にわたり母親と寄り添うのは難しいという。

 助産院を運営しながら、地域の子育て支援にも取り組む笹倉千香恵さんは「連絡した時に『何もない』と答えたとしても、会ってみると1時間半も話す人がいる」と明かし、中野さんは「その人が本当に何を大切にしたいのかを感じ取るためには、長い期間つき合い続けなければならない」と語った。

 

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