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助かり合うご縁紡ぐ 津市で親なきあと講演会

2023年6月30日

※文化時報2023年5月26日号の掲載記事です。

 障害のある子やひきこもりの子の世話を親ができなくなる「親なきあと」の問題について考えようと、真宗高田派妙華寺(みょうけじ)(中川和則住職、津市)は13日、津市久居アルスプラザで一般向けの講演会を開いた。一般財団法人お寺と教会の親なきあと相談室(小野木康雄代表理事)の支部開設記念行事で、藤井奈緒理事兼アドバイザーが登壇。約20人を前に、自身の体験を交えて備えの大切さを訴えた。

「カフェ」も開催へ

 藤井理事は、重度の知的障害がある長女(20)の母親。障害のある子の親は「私が死ぬときはこの子を連れていく」と言ってしまいがちだが、その影響で「親より早く死にたい」と願う子どもがいると明かし、「そう思わなくて済むように、できることから備えを始めてほしい」と呼び掛けた。

藤井奈緒理事兼アドバイザーが登壇した講演会
藤井奈緒理事兼アドバイザーが登壇した講演会

 その上で、子に残す財産は「いくら残すかよりどう残すか、誰が本人のために適切に使ってくれるかを考える方が大事」と強調した。また、多くの相談に乗ってさまざまな情報を提供しても、相談者の表情は必ずしも晴れないと指摘。「制度や契約では備えられないことがある。助け合い、助かり合うご縁を紡ぐことが、親も子も幸せに生きることへとつながる」と語った。

 妙華寺は今後、当事者家族らが悩みや不安を分かち合う「親あるあいだの語らいカフェ」を年3回、2月と6月、10月に開く。第1回は今年10月に行う方向で準備を進める。

語らいカフェを開く予定の妙華寺境内
語らいカフェを開く予定の妙華寺境内

他の相談室とも協力

 親なきあと相談室は全国に100カ所余りあり、お寺が開設した相談室はこのうち13カ所に上る。他は司法書士や行政書士、社会福祉士といった専門職が運営する例が多く、それぞれが得意分野を生かして活動している。

 津市には、ファイナンシャルプランナーの鈴木伸行さんが代表理事を務める「みえ障害者の親なきあと相談室」があり、専門職や行政関係者らによる非営利のネットワークを構築。相談に乗るだけでなく、障害のある子の親向けに勉強会を開いている。

 この日の講演会では、鈴木さんと藤井理事による対談も行われた。鈴木さんは「知識こそ力。多くを学んでもらうことで、より良い選択肢が生まれる」と指摘。「親の終活に関する相談が増えており、妙華寺さんとも連携したい」と期待を寄せた。

「みえ障害者の親なきあと相談室」の鈴木伸行さん(中央)との対談も行われた
「みえ障害者の親なきあと相談室」の鈴木伸行さん(中央)との対談も行われた

 会場からは、成年後見制度=用語解説=を利用する際の準備にまつわる質問が寄せられ、藤井理事は「まず後見人になってもらいたい個人や法人を見つけることが大事」、鈴木さんは「報酬がいるので、つける時期を考える必要がある」と答えていた。

 閉会のあいさつで中川和則住職は「相談者に伴走する支援として、傾聴に取り組みたい。地域で親なきあとの問題に関わる皆さまと共に活動したい」と抱負を述べた。

【用語解説】成年後見制度(せいねんこうけんせいど)

 認知症や障害などで判断能力が不十分な人に代わって、財産の管理や契約事を行う人(後見人)を選ぶ制度。家庭裁判所が選ぶ法定後見制度と、判断能力のあるうちに本人があらかじめ選んでおく任意後見制度がある。

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