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夏の寺子屋で医ケア児と交流 浄土宗願生寺

2023年9月6日

※文化時報2023年8月11日号の掲載記事です。

 大阪市住吉区の浄土宗願生寺(大河内大博住職)は7月26、27の両日、「夏休み寺子屋さっとさんが」を開いた。水遊びやスイカ割りなどのほか、2021年9月に始めた防災プロジェクトの一環として、子どもたちが医療的ケア児=用語解説=の潮見邑果(ゆうか)さん(13)と昨年に続いて交流。災害発生時の応急措置も学んだ。(大橋学修)

 願生寺は、毎月第3月曜に近くのカフェで子ども食堂=用語解説=を開き、合わせて「寺子屋さっとさんが」として子どもたちに境内を開放している。夏休み寺子屋は昨年、保護者の要望で始まった。

 プログラムは両日とも午前7時半のお勤めから始まったが、ほとんどの子どもたちは時間いっぱい遊ぼうと、その日の勉強を済ませてから参加。

 ボランティア参加の大学生や近くの大阪市立墨江丘中学校の生徒を相手に、鬼ごっこや風船バレーなどで境内を走り回り、歓声を響かせた。

水遊びではしゃぐ子どもたち=7月27日
水遊びではしゃぐ子どもたち=7月27日

 防災関連では、子ども食堂を運営するボランティア団体「こども食堂にじっこ」代表の中西秀美さんの協力で、食育を兼ねた料理体験を実施。調理器具を使わず、ポリ袋を使ったオムレツやすいとん作りなどに挑戦した。

 防災看護を専門とする亀井縁(ゆかり)四天王寺大学教授は、防災保存食のアルファ米を、嚥下(えんげ)力の弱い人向けに調理する方法を教えたほか、避難所で役立つ新聞スリッパや、45リットル袋を用いたレインコートの作り方を指導した。

同じように心で感じる

 医ケア児の邑果さんとの交流は、一般社団法人「できわかクリエイターズ」(引地(ひきじ)晶久代表、大阪府茨木市)の協力で「視線入力装置」を使い、障害の有無に関わらず楽しめるインクルーシブゲームを行った。

 視線の動きに合わせて動くカーソルで画面を塗りつぶしたり、キャラクターに視線を合わせて音楽を奏でさせたり。ゲームを始めると邑果さんの表情はみるみる明るくなり、「がんばれ!」と声援が飛び交った。

医療的ケア児の潮見邑果さんと交流した=7月26日
医療的ケア児の潮見邑果さんと交流した=7月26日

 邑果さんが通う大阪府立東住吉支援学校中学部の山本裕道教諭は「学校では見せない表情」と驚き、小西かおる大阪大学教授は「意思を持って動かしているのを見て、『同じように心で感じているのだ』と子どもたちが思うことが大切」と話していた。

 ゲーム前に行った質問コーナーでは、「トイレはどうするの?」「好きな色は?」と質問が相次いだ。棗田(なつめだ)みのりさん(9)は「もっと邑果ちゃんのことを教えてほしい」と話し、ボランティアで参加した大阪大学4年の福井悠斗さん(22)は「自分は何もできなくてもいいと分かったので、昨年より抵抗なく触れ合えた」と振り返った。

 邑果さんの母、純さん(50)は「昨年は気後れして距離を取っていたが、今年は、大人の手助けがなくても積極的。狙い通り」と手ごたえを感じていた。

【用語解説】医療ケア児

 

  人工呼吸器や胃ろうなどを使用し、 痰(たん)の吸引や経管栄養などの医療的ケアが日常的に必要な児童。厚生労働省科学研究班の報告では、2017(平成29)年時点で全国に約1万8千人いると推計されている。社会全体で生活を支えることを目的に、国や自治体に支援の責務があると明記した医療的ケア児支援法が21年6月に成立、9月に施行された。

【用語解説】子ども食堂

 

 子どもが一人で行ける無料または低額の食堂。困窮家庭やひとり親世帯を支援する活動として始まり、居場所づくりや学習支援、地域コミュニティーを形成する取り組みとしても注目される。認定NPO法人「全国こども食堂支援センター・むすびえ」の2022年の調査では、全国に少なくとも7363カ所あり、宗教施設も開設している。

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