2023年9月23日 | 2023年12月5日更新
※文化時報2023年7月21日号の掲載記事です。
障害のある子やひきこもりの子の親が、わが子の面倒を見られなくなったときに直面する「親なきあと」の問題について関心を持とうと、カトリック登美が丘教会(奈良市)で9日、信者有志が企画して講演会が行われた。一般財団法人お寺と教会の親なきあと相談室(小野木康雄代表理事)の支部を開いて活動する真宗大谷派の僧侶、三浦紀夫氏が登壇。信者ら約30人が〝福祉仏教流〟の取り組みを学んだ。
演題は「8050問題=用語解説=と宗教者の社会貢献」。三浦氏は、普段の活動を紹介する中で、自身が関わる高齢者施設の利用者が入院した際に「面会に行くことを大切にしている」と話した。普段から顔を知る僧侶がベッドサイドに赴くことで、お年寄りがほっとして日常を取り戻せると明かした。
また、日ごろから連携する看護師や薬剤師との会話から、宗教者へのニーズが高いことを実感していると強調した。
8050問題に関しては、さまざまな実例を紹介しながら「親が50代、子が20代の頃から、社会が手を差し伸ばさなければならないのではないか」と指摘。「家の中で抱えていても、問題は解決しない。まず親から子を手離してくださいと伝えている」と語った。
その上で、お寺と教会の親なきあと相談室について、「宗教施設には、神仏が重荷を支えてくれるというバックボーンがある。抱えている問題を話し合えるような場を作ってくれたらうれしい」と伝え、活動への協力と参加を呼び掛けた。
今回の講演は、三浦紀夫氏が非常勤講師を務める上智大学グリーフケア研究所で学んだカトリック信者の上田充さんが、地元の登美が丘教会のメンバーにも、お寺と教会の親なきあと相談室の活動を知ってほしいと企画した。
上田さんらは、三浦氏が親なきあと相談室を開く聞法道場「あかんのん安住荘」(大阪市平野区)などで、当事者や家族が語り合う「親あるあいだの語らいカフェ」に参加。将来、登美が丘教会でも開催できないかと考えており、10月に開講する「文化時報 福祉仏教入門講座」の第5期の受講もする予定だ。
今回の講演会は、日曜のミサの後に行われた。登美が丘教会の柳本昭神父は、講演に先立ち「宗教を超えて、私たちが共に人々の重荷に手を添えられないか、何かできないかを、学んで探したい」と述べた。
質疑応答では、信者から熱心な質問や感想が聞かれた。ひきこもりの経験がある子の母親という女性は「当時は相談するにも、勇気やパワーが必要だった。私は教会に救われ、神父さまと仲間に『あの子は大丈夫』と言ってもらえたことが支えになった」と語った。
別の女性は、統合失調症の可能性がある知人から頻繁に電話で相談を受けているものの、「誰にも言わないでほしい」と頼まれることから「どう病院につなげればいいのか分からない」として、いい方法がないか尋ねた。
これに対し、三浦氏は自身が対処した実例を挙げながら、「一概には言えないが、一つだけ共通するのは『とにかくあなたのことを心配している』と伝えることではないか」と語った。
【用語解説】8050問題(はちまるごーまるもんだい)
ひきこもりの子どもと、同居して生活を支える親が高齢化し、孤立や困窮などに至る社会問題。かつては若者の問題とされていたひきこもりが長期化し、80代の親が50代の子を養っている状態に由来する。