2023年11月26日
※文化時報2023年10月24日号の掲載記事です。
お寺と教会の親なきあと相談室横浜香仙院支部(畑智晃支部長)は8日、横浜市鶴見区の天台宗寶泉寺(横溝常之住職)で支援者向けの講演会を開いた。障害のある子やひきこもりの子の「親なきあと」を、まずは専門職に考えてもらおうという初の試み。本堂で14人、オンラインで19人が聴講し、自分たちにできることは何かを考えた。
重度の知的障害のある長女(20)の母親で、一般財団法人お寺と教会の親なきあと相談室の理事兼アドバイザーを務める藤井奈緒さんが登壇。障害者家族が抱く不安とその背景▽支援者に協力してもらいたい備え▽支援者に向けて伝えたいことを書き残すノートの活用法―について話した。
藤井さんは、障害者の親たちがわが子の住まいや生活費などの備えに関し「何から手をつければいいか分からず、不安になってしまう」と指摘。
「私が元気なうちは私が面倒を見る」「私が死ぬ時はこの子を連れていく」という発想にならないよう、支援者の理解と協力が必要だと訴えた。
その上で、看取(みと)りと弔いの専門家であり、心の部分を引き受けてくれる宗教者が多職種連携には必要だと伝えた。お寺の長所については、ずっと同じ場所にある▽担当者が異動しない▽対応が午前9時~午後5時だけではない―ことなどを挙げ、支援者に活用を求めた。
また、「私たちは結局一人。制度や契約ではない関係を紡ぎ、支え合うこと、助かり合うことが大事だ」と呼び掛けた。
本堂で講演を聴いた浄土真宗本願寺派光明寺の僧侶、冨山雅人さんは「自分は関係ないという考え方から踏み出し、障害のある人を含む共生社会をつくっていかなければならない。お寺にも、時代に合わせた役割があると感じた」と感想を語った。